2021年12月01日

三菱1号館美術館「印象派・光の系譜」展に行ってきました、の巻

「日本初出展」作があるとの謳い文句に惹かれて、見てきました、「印象派・光の系譜」展。
確かに、「イスラエル博物館」からの出展というのは珍しいし、「イスラエル博物館」が「印象派コレクション」を整えているというのも腑に落ちる。

■印象派は・・・正直もうおなかいっぱい、という気持ちが強いです、私にとって。
なので、印象派展は久々で、三菱1号館美術館に行くのも久々だと思います。
印象派で三菱1号館美術館・・・ってもしかして「ナビ派」展以来か? ナビ派の系譜としての印象派をまとめて見て以来かもです。わー。

三菱1号館美術館の展示で好きなのは、必ず、「撮影可能」エリアを作ってくださることです。
今回も、きちんと撮影可能な展示室がありました。

20211130_印象派光の系譜展_ピサロ_エラニーの日没.jpg
印象派の長老(と勝手に思っている)ピサロの「エラニーの日没」。
しみじみと、いい絵です。
ピサロの人柄そのものが表れているような、誠実で温厚な、見ていると気持ちが穏やかになる絵です。
私は、印象派にこういうモノを求めているんですよね・・・

20211130_印象派光の系譜展_ゴッホ_麦畑とポピー.jpg
ゴッホの「麦畑とポピー」。
正直、もうゴッホは飽き飽きなのですが、この作品はとても良かった。
「星月夜」や「糸杉」のような苛烈な作品が生まれる前の、素朴で明るい絵で、気持ちがざわざわしません。
いいなぁ・・・

今回の展覧会のメインタイトルである、本邦初出展、初来日の1907年のモネの「睡蓮」もしみじみと良かったです。
イスラエル博物館はこういう「しみじみと落ち着いた」作品をセレクトして貸し出してくれたのでしょうか(もちろん、本展学芸員の方々の企画意図がそういう方向だったのでしょうけれども)。

過激さを謳わず、五臓六腑に染み渡るような落ち着いた作品が多く、とてもいい展覧会だと思いました。

■今回の音声ガイドは、声優の榎木淳弥さんでした。
子音の擦過音とため息のような音が多いのが少々気になりましたが、演技は過剰ではなく声も爽やかで、本展の企画意図に合っていたと思いました。
もっともっと、演技っぽさを削っていいと思います。
私がイメージしているのは、大河ドラマの副音声です。
所々演技は入りますが、基本無色透明な。
2010年から大河ドラマの副音声を担当なさっている宗方脩さんは、本当にお上手だと思います。
この方向で音声ガイドが制作されるようになるといいなぁ。

■ところで、先に挙げた「ナビ派」展がとてもよくて、今でも時々図録を眺めたり関連図書を読んだりしています。
BL小説なのですが、一穂ミチさんの「アンティミテ」はそのナビ派のアーティストの一人であるヴァロットンの連作「Intimités」をモチーフにしており、私はとても好きな作品でした。

考えてみれば、印象派ってもう150年も前のもので、もはや「時代劇」の世界なんですよね。

ちょうど明治維新のころと時代が重なっていたため、さも「新しいもの」という印象が、日本人には植え付けられていますが。

印象派のその先、でもキュビズムよりちょっと手前のナビ派をまとめた展覧会を、また見たいなぁ・・・なんて思ったのが、今回の「印象派・光の系譜」展を見たあとの、一番の率直な感想かもしれません。

■本日、中村吉右衛門さんの訃報に接しました。衷心よりお悔やみ申し上げます。


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2021年11月28日

サントリー美術館「聖徳太子 日出づる処の天子」展に行ってきました、の巻

■2022年は、聖徳太子1400年忌なのだそうです(今年は最澄で来年が聖徳太子!!)
なので、「千四百年御聖忌記念特別展」という大きなタイトルがついています。

20211126_聖徳太子展.jpg

■サントリー美術館は、事前予約不要です。
なので今回はふと思い立って、夕方に行ってみました(金曜、土曜は20時まで開場しています)
入り口のところで「四天王寺拝観券の提示いただければ200円割引」との但し書きがありました。
「四天王寺? 大阪の? なぜだ?」
と少々いぶかりながら入場しまして・・・納得しました。

ちょ! 今、大阪の四天王寺に行ったら、何が残ってるの!?

・・・というくらい、四天王寺のアイドル・・・じゃなかった、ご本尊・救世観音&聖徳太子(聖徳太子は救世観音の化身と考えられている)の秘仏だの太子像だの絵伝だのがしこたま展示されていました。
いやもう・・・四天王寺、今すっからかんなんじゃ・・・?(そんなことはない)

■聖徳太子と言えば、まず旧一万円札を思い出します。
ついで、山岸凉子先生の「日出ずる処の天子」を思い出します。あの、なまめかしくも悩ましい、みずら姿の美少年・厩戸皇子。
どちらかと言えば、後者のイメージが私の中には強いです。

けれど、この展覧会を通じて改めて気がついたのですが、聖徳太子は江戸時代くらいまでは、むしろ「宗教者」として人々の信仰を集めていたのですよね・・・
「宗教者」としての聖徳太子は、正直ピンときていません。
太子信仰が広がっていた、というのも「そうなんだ・・・」という感慨程度。

この展覧会は、時代によって異なる「聖徳太子」のイメージを説明してくれました。
まずは、長らく「信仰対象」となっていた聖徳太子。
ついで、十七条の憲法を制定した、政治家としての聖徳太子(特に明治以降。お札になったのは「政治家・聖徳太子」のイメージによるようです)
そして、少女マンガの主人公としての、聖徳太子。

展覧会のタイトルに「日出づる処の天子」とあるので、
「これは処天(ところてん / 山岸先生の「日出ずる処の天子」の略称としてはこれが一般的なのではないでしょうか?)をイメージしているのかしら?」
なんて思っていたのですが、宗教者としての聖徳太子像の遍歴を長々と展示したあと、「近現代の聖徳太子像」の一部として、なんと、山岸先生のカラー原稿とマンガの生原稿の展示が!!!(びっくり)
いやあ・・・カラー原稿、本当に美しかったです・・・日本画の技法で書かれてるんですね、カラー原稿(そんなことを、ずいぶん前に読んだ記憶がありますが、あれは実際に見ると「確かに日本画だ・・・」と感動も新たになります)。

あれ、図録見たら・・・これからあと2回、カラー原稿の展示替えがありますね!!!

現在は「法隆寺観音と聖徳太子」と「迦陵頻伽」が展示されています。
ちょうど、四天王寺最大のお祭りである「聖霊会」舞楽の展示の反対側にこれらの原稿が展示されており、ことに「迦陵頻伽」はこの舞楽の中にも登場しますので、とてもイメージしやすかったです。

■それにしても、です。
私は、山岸先生の「日出ずる処の天子」以前の、宗教家もしくは政治家としての「聖徳太子」像をマンガを読む前に知っておきたかったと・・・かなわぬことなのですが、つくづく思ってしまいました。

先に宗教家・政治家としての聖徳太子を知っていて、そのあとに、そのイメージを覆す、「日出ずる処の天子」を読んだら、どれほどの衝撃があったでしょうか。

私はまず、「日出ずる処の天子」で聖徳太子を知り、その後に政治家としての聖徳太子について学びました。
太子信仰はもっともっと後になります。

山岸先生の厩戸皇子はあまりに鮮烈で、強烈で、もはや「あの」厩戸皇子抜きに聖徳太子をイメージすることは出来ません。

「天地がひっくり返るほどの衝撃」「価値観の混乱」を味わってみたかったなぁ・・・と。
大変贅沢なのですが、そんなことをおもいました。
はい、贅沢なのは承知しています(笑)

■さて、童子姿の聖徳太子像はあちこちにありますが、今回展覧会には初出展となった、兵庫県鶴林寺の秘仏「聖徳太子童立像(植髪太子)」は大変印象深かったです。
「植髪」の名の通り、「本物の毛髪」を長く垂らし、「本物の絹衣」をかけられた姿は、その生々しさと同時に、「聖徳太子」が広く篤く信仰されていたことを目撃した思いがしました。
単に掘り出したり描いたりしたものではなく、「毛髪」を備え「衣を着せかけられた」姿には、「人の思いの強さ」を感じざるを得ません。

こちらは、展覧会前期にしか展示されないようです(秘仏ですものね・・・そんなに長くお寺から引き離していいものではないでしょう)

気になる方は是非お早めに。

■会場はそこそこすいていて、とても見やすかったです。
国立新美術館で催されている「庵野秀明展」をご覧になる予定のある方は、すぐ近くにあるサントリー美術館にも足を伸ばし、山岸先生の生原稿を見てみてもいいのではないでしょうか。
あ、12月中は六本木ヒルズで「『鬼滅の刃』吾峠呼世晴原画展」も開催されていますよね。
一日かけてこれら3つを回ってみるのも、いいかもしれません。

(追記)今回の音声ガイドは、声優・鳥海浩輔さんがご担当でした。「〜ね?」という聞き手への呼びかけの語尾が少々うっとうしかったですが(これは台本の問題も大きい気がします)、演技も過剰ではなくほどよかったので、引き続きこういう音声ガイドだったらいいなぁ、と願っています。

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2021年11月19日

最澄と天台宗のすべて展、の巻

■今年は、伝教大師=最澄の大遠忌(今回の場合は最澄が亡くなって1200年目)なのだそうです。
1200年!!! ・・・知らなかったよ・・・

というわけで、上野の東京国立博物館に行って参りました。
20211118_最澄と天台宗のすべて展_01.jpg

■まずはいつもの通り、音声ガイダンス。
今回は市川猿之助さんのご案内です。
猿之助さん、いいですねぇ。
厳かで自然。妙に作ったようなしゃべりではないところがとてもいい。
ここはちょっとご理解いただきたいのですが、最近は声優さんが音声ガイダンスに携わることが多く、私は正直、彼らの演技が「過剰」であることがとても気になっていました。
つい最近だと、サントリー美術館の「刀剣 もののふの心展にいってきました」がそれに該当するのですが、せっかくいい解説を話してくださっているのに、演技のクセの強さで内容が頭に入ってこない場合が増えました。
私は音声ガイダンスが好きなので、あれば必ず借りますが、最近はちょっと「誰がガイダンス担当なのかしら?」とちょっと身構えるようになりました。

今回は、「ちょうど良かった」。
猿之助さんの声は、鑑賞の邪魔にならず、内容もきちんと頭に入ってきて、「私にはちょうど良かった」です。
これからも、こういう音声ガイダンスを望んでやみません。

■さて、今回の個人的な目的は、兵庫の一乗寺にある、「聖徳太子及び天台高僧像」。
入場して割と最初の方にありましたよ!
子供の装束の聖徳太子が描かれています。気高い〜 綺麗で可愛い!(うっとり)
同じ並びにある最澄様と同様、お顔が真っ白に描かれています(参照:公式サイト
綺麗で尊い存在の方は胡粉でお顔を真っ白に描くのが定石。
実際にイケメンだったという最澄様も聖徳太子も、うっとりするような美しさでありました。
もうこれだけで結構おなかいっぱいです(笑)

■イケメンは字も美しかったのか、最澄様の直筆書もとても綺麗でした・・・というか几帳面よね。
最澄様といえばどうしても空海様(弘法大師)がライバル的存在・・・というか比較の対象になります。
空海様の書で有名な「風信帖」は実に自由闊達で、正直私は臨書にトライできていません。
あれこそ「全体を見て美しい」書の決定版のひとつであり、一文字一文字をきっちり書き写すのには向いていないのではないかなと思います(作品として、字の崩し方を学ぶにはいいのですが)
それに対して、最澄様の字は一文字一文字臨書すると大変勉強になります。文字の姿が美しい。

■そうそう、同時代の能書家として有名な嵯峨天皇宸筆「光定戒牒」もありましたよ!
私、嵯峨天皇の字がとても好きです!
とても優雅で品があります。
ああいう字を書けるようになりたい・・・(志は高く!)

20211118_最澄と天台宗のすべて展_02.jpg
唯一撮影可能だった、比叡山の根本中堂再現展示。
東博は、こういう「撮影可能エリア」を作ってくれるので好きです。
一番印象的だったのは、2019年の「三国志展」の中の「曹操高陵」の再現展示かなぁ・・・(参考:公式ブログ
今回の根本中堂再現も、大変迫力がありました。

■比叡山は延暦寺だけでなく他のお寺も所属する一大聖地です(ご存じの方も多いかと思いますが)
私は中でも慈恵大師(もしくは元三大師。良源様)にとても興味があります。
今では厄除けのお札のシンボルとして有名な「角大師」は、良源様が「疫病を祓うために変化した姿」を写し取ったものです。
また、「おみくじ」を最初に発明した方ともいわれています。
今回の展示では期せずして、慈恵大師関連の展示も多く、まとめてじっくり見られたことも私にとってはラッキーでした。
何より、展覧会の締めくくりに鎮座まします2メートルあるという大迫力の元三大師像!
東京の深大寺の秘仏で、なんと205年ぶりに上野にお出ましだったそうです(参考:深大寺サイト
大迫力!
この眼光の鋭さならば、疫神もひとたまりもなかったでしょう。納得。
ちなみに、慈恵大師も生前大変なイケメンで、女官たちから追いかけ回されていたとか。
真面目な良源様は、逃げ回っていたそうですが(笑)

■慈恵大師からだいぶ時代が下って江戸創建期の天台宗の高僧といえば・・・そう、慈眼大師こと天海僧正ですね。
江戸城の鬼門に上野寛永寺と作り、また日光東照宮を備えて江戸の守りを堅くした方。
こちらの展示物も大変多くて、楽しかったです。

■実は「終わったらまとめて読もう」と思っていたおかざき真里先生の「阿・吽」ですが、無事に14巻で完結していたのですね・・・
今回の展覧会は、その完結記念ともコラボしていました。

展覧会を見終わって、2階の展示室からエスカレーターで下ってくると・・・

20211118_最澄と天台宗のすべて展_04.jpg
おお、おかざき先生の最澄様が!
美しい〜
ちなみに、コラボ商品の、最澄様のクリアファイルがあまりに美しかったので買ってしまいましたよ(笑)

■今回の展覧会は、入場するのに事前予約が必要で、1時間ごと区切って入場することになっていました。
その入場の待機列は1階の待合所に作られているのですが、そこの一角にカフェがしつらえられており、そこで「梵字ラテ」(ほうじ茶ラテと抹茶ラテの2種類)をいただくことが出来ました。

20211118_最澄と天台宗のすべて展_03.jpg
梵字ラテと、「阿・吽」コラボグッズのトートバッグ

■展示は「90分以内で見てください」とのことでした。
その点、時間無制限の「庵野秀明展」とはだいぶ趣が違いました。
でも、音声ガイダンスにしたがってみていると、大体そのくらいになるように思います。
大遠忌ということで、国宝・秘仏満載の、大変見応えのある展覧会でした。

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posted by Lilalicht_8 at 20:49 | 東京 ☀ | Comment(0) | 展覧会

2021年11月16日

庵野秀明展に行ってきました〜全きものと不完全なるものについての感慨、の巻

■11月14日放送のフジテレビの鼎談番組「ボクらの時代」は、「土竜の唄ファイナル」の宣伝で、生田斗真×三池崇史×宮藤官九郎のお三方でした。
その中で三池監督が、
「作家性を前に出す映画監督をうらやましく思う時もある」
というようなことをおっしゃっていて、その「作家性を前に出す映画監督」の例として、「宮崎駿」「庵野秀明」をお二方を挙げていたのが、とても興味深かったです。

実写映画監督がうらやましいと思うのが、奇しくも「アニメ」を活躍のフィールドとしている映画監督だったというのは・・・現状に対する皮肉なのかしら?
それくらい、「実写」という表現手段は今、ポリコレ的な表現規制が入って不自由さを感じる状態になっているってことなのかな?
・・・なんて穿った見方をしてしまいました。
正直に言うと、「実写映画」監督で作家性を押し出している方々の映画を私は好まない・・・というか、積極的に嫌いなので(必ずといっていいほど政治的な思想を入れ込んでくるから)、自業自得なんじゃ?と思ってはいますが。

■「庵野秀明展」を見に行く日はあらかじめ決めていたので、その前日に「ボクらの時代」で三池監督の発言を伺ったのは、本当に偶然でした。
偶然だったのですが、「作家性」という言葉が今回の展覧会を見に行った結果、大きなポイントになっていたので、こういうのも嬉しいシンクロニシティでした。

20211115_庵野秀明展_1_第3村全景.jpg
NHKのドキュメンタリー「さようなら全てのエヴァンゲリオン〜庵野秀明の1214日〜」に登場していた、「シン・エヴァンゲリオン」の第3村の模型。
思った以上に大きかったですよ・・・
これを作るだけでどれだけの日数と人員を使ったんだろう?
で、この「第3村」の中にある「家」は「思った以上にバラック」でしたよ。
よく、太平洋戦争終戦後の日本の風景として、朝ドラなんかで見るやつ・・・あんな感じ。
「ニア・サードインパクト」後の世界は、日本は、「戦後」だったんですね・・・

20211115_庵野秀明展_2_第3村注意書.jpg
当たり前ですが、こういう注意書がありました。
「映画に出てきたのと違う!」とか、ツッコむ人がいるんでしょうか。・・・いるんだろうな(笑)

20211115_庵野秀明展_3_ケンスケの家.jpg
ケンスケの家もありました。
当然といえば当然なのですが、家と比較するためにケンスケと車も置かれていました。
判りやすい。
屋根が低い。
バラックだわ。

20211115_庵野秀明展_6_シンゴジラ折紙.jpg
「シン・ゴジラ」に出てきた「折紙」です!
これは小さいバージョン。
小さいバージョンは、思っていたよりだいぶ小さかったです。

で、私がとても面白い、と思ったのが…
「シン・ゴジラ」の企画意図のメモ書きでした。
20211115_庵野秀明展_4_シンゴジラ覚書.jpg
注目したのは、「・バランスの悪さ ・目の怖さ」という走り書きでした。
そうか、ほぼ初期の企画段階から、「バランスの悪さ」というのはこの映画のキモになっていたんだな…

20211115_庵野秀明展_5_シンゴジラ.jpg
そして結果として出来上がったのは、妙に手が小さく、しっぽの長い「バランスの悪い」第四形態のゴジラだったんですね。

「シン・エヴァ」を作るにあたって、庵野監督がドキュメンタリーの中で何度か「構図がすべて」と言っていました。
私はその言葉にとても共感を覚えていて、まず「いいバランス、落ち着くバランス、構図」というのを把握したうえで、ちょっとだけ生理的にあわないように「バランス・構図を崩す」ということを、書道の作品の中で意図的に行っています。
でも、全体の「構図」は気持ちいい感じに作り上げる。
「バランスの悪いもの」を「気持ちのいい構図」にする作業は難しく、と同時に、それがはまるとある種の「普遍性」に到達するというのは、どんな表現の中にもあるものだと思います。
クラシック音楽の中でも、「何でここだけ気持ちの悪いシャープ(もしくはフラット)になっているの?」という楽曲は多いもので、逆に言うとその「気持ち悪さ」がなければ、その作品は「永遠」に到達できなかった。
そういう「不安なバランス・構図」の追求は、とても楽しく…終わらないものなんですよね。いつかは終わらなくちゃいけないんですけど。

不安なバランス、構図は面白い。
でもそれには、「完全なるもの、安定したもの」が存在することが前提であるはず。
…なんてことを考えながら見ていたところ。
最後の最後に展示されていたのが、こちらでした。
キャプションだけ。
実物(複製ですが)は是非、現地でご覧ください。

20211115_庵野秀明展_8_真実と正義と美の化身.jpg
なるほどなぁ…と。
「真実と正義と美の化身」
不安定であること、不安であること、何かが欠けていることを追求している人の脳裏には、常に「全き美」の化身が実物として存在しているんだなぁ…

勝手ながら、私は感動していました。

ところで、展覧会の冒頭に、この看板がありました。
20211115_庵野秀明展_7_入口看板.jpg
これを私が眺めていた時に、たまたま時同じくして眺めていた方々が、
「うれしそうな顔してるよねぇ」
「いい顔してるよねぇ」
と嬉しそうに語り合っていました。

本当に、いい笑顔ですよね。
とてもいいと思いました。

(2021年11月17日追記)
「庵野秀明を作ったもの」コーナーに、「超少女明日香」のカラー原稿があったんですよ…
不意打ちを食らったように動けなくなった。
和田慎二先生のカラー原稿を、ここで見られるとは思わなかった。
自分、泣くかと思ったです💦

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posted by Lilalicht_8 at 21:35 | 東京 ☀ | Comment(0) | 展覧会

2021年10月16日

刀剣 もののふの心展にいってきました、の巻

■そもそも私が学芸員の資格を取ろうと思ったきっかけは、曾祖父でした。
曾祖父が集め、その息子である祖父が手入れをしていた刀や、曾祖母が曾祖父に輿入れの時に実家から持たされた懐剣などが実家にあり、いずれの時にか、これらをなんとかしなければならない日が来る。
その時「なんとかする」のは私の役目になるだろうという覚悟がありました。

最近実家にあるものをいろいろ整理するうち、その「当の本人」である曾祖父の、おそらくはその最盛期の写真を見ることができました。

20211016曾祖父の写真.jpg

ひいおじいちゃまは、こんな感じだったらしい。
日露戦争で軍功を挙げ、亡くなった時には天皇陛下から供花を賜った(その前に当然勲章ももらっていたわけですが)という、伝説のひいおじいちゃま。
軍刀用に刀身を短くしてしまったものもあるけれど、おそらくは「趣味」として所有していた刀もあり、大学生の時には遠い未来だった「いずれなんとか」しなくちゃならない「いずれ」が直近の課題として立ち上がってきた・・・
そんな折に、いかにも帝国陸軍の軍人さんらしい写真がぽろっと出てきて、

「これはひいおじいちゃまとおじいちゃまが、なんとかしろっていってるんだよね・・・」

なんて、いよいよ以て刀の勉強をしなければならない覚悟が出来た。
そんなときに、サントリー美術館で開催されていたのが、「刀剣 もののふの心展」でした。

鞘や拵のない刀もあるため、いつか私に大金が巡ってきたら、それぞれの刀にふさわしい装いにしたい。
・・・という願望もあり、だったら本物見て勉強するのが手っ取り早いよね。
なんていう、よこしまな思いもあって、足を運んできました。

20211015刀剣もののふの心展.jpg

で、ブログやTwitterで私のことをご存じの方はおわかりいただいているかと思いますが、私は基本的にゲームに触れてこなかった人間です。
ドラクエとか、友達がやっていたのはしってるけど、なんというか・・・推理小説でも犯人をしってから読むくらい、「答えを先にしりたい」人間なので、ゲームってあんまり性に合わなかったんですよね・・・(本だったら先に結末読むこと出来るじゃないですか)
それが、スマホのゲームにまで進化してしまうと、本当に世の中のゲームの趨勢とは全く関係なくなってしまい。

そうか、刀剣乱舞って、すごいコンテンツなんだな。

改めてこの展示会に足を運んで思い知りました。
美術館に行って初めてしったよ・・・コラボしてたなんて。

サントリー美術館て、展示会場は4階から始まって3階に降りるのが常套なのですが、え?6階に行く人がいる・・・?
6階なんて何があるの? え? 等身大パネル? ・・・等身大ってなんの? 刀の? それは原寸大だよな・・・(プチパニック)

音声ガイダンスが好きなので、特別展に行く時は必ず音声ガイダンスを借りるのですが、あれ、しらない声優さんがすごく役を作った感じで解説してる・・・(なんのことやら?)

正直に言うと、そちらの方が衝撃が大きかったです。

ちなみに、私の中で今でも「声優さんによる音声ガイダンスで至高のできばえ」だと思っているのは、2017年に東京都美術館で開催された「ゴッホとゴーギャン展」です。
ゴッホとゴーギャン、それぞれの手紙や日記を読む声優さんの迫真の演技は、今でも忘れられない。
音声ガイダンスだけ、amazon Audibleとかで売り出してもいいのに。
そう思うくらい、「こういう展示方法もある」と世の中に提示した「作品」でした。

閑話休題。

で、やっぱり女性が多かった。
比較的すいてたけど。
割合としては体感9割は女性でした。
必要に迫られ、「勉強しなければ」という半ば義務感もあって見に行ったよこしまな私と違い、皆さんそれぞれに刀の美しさを堪能していらっしゃって、とても素敵だと思いました。
やはり好きこそものの上手なれ、で、本当に好きな人たちにはかないません。

よこしまな私は、抜き身の刀の美しさはもちろん堪能しましたが、鞘とか拵とか鍔とか・・・とにかく装飾の方に目が行って、
「ふむ、やはりこういう刀にはこういう色味や素材の装飾がいいよね」
などと。
将来あり得べき、我が家の刀の姿を考えてばかりでした💧
ただ、もっと刀の装飾については数を見て美意識を高めたい、という気持ちが盛り上がったので、それは大収穫でした。
日本刀に関わる職人の皆さん、そのうちお願いする日もあるかと思いますので、宜しくお願い申し上げます。

そして、今回も出ましたサントリー美術館の得意技、「酒呑童子絵巻」。
何度見てもいいですよ、絵巻物。
また、「絵巻物展」やってほしい。展示すると劣化するのは判ってるんだけど。

井伊の赤備え、井伊家の赤漆の甲冑も見られて、大変満足のいく展覧会でした。
声優の鈴木裕斗さんによる音声ガイダンスも、過不足なくちょうどいい感じで良かったです(でも、そんなに役を作り込んだ感じで読まなくても良かったんじゃないか、とおもったり。もっと淡々としていいですよ)。

コロナも一段落ついたところで、また美術館をそぞろ歩きしたくなりました。
これがそのいいきっかけになったかもしれません。

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2020年01月10日

ハプスブルグ展に行ってきました、の巻

■用事を済ませた後、思い切ってハプスブルグ展にいってきました! 会期終了間近の滑り込みです。

20200110ハプスブルグ展1s.jpg
最近の・・・ってどのくらい前から最近って言ってるのか我ながら不明ですが(笑)本当に学芸員の方々が工夫を凝らした展示を企画してくださって、今回のこの展覧会も、単に時代を追って絵を並べるのではなく、その時代のキィパーソンになるハプスブルグ家の人々をアイコンに、「その時代のコレクション」としてまとめていたのが大変面白かったです。
コレクションの主が明らかになると、人と時代と絵画の流行が一緒になって頭に入ってくるので、大変わかりやすく、記憶に残りやすかったです。

ざっくりと「時代のアイコン」になっていたのは、

マクシミリアン1世
ルドルフ2世
スペイン王フェリペ4世(今回の企画展のキィビジュアルとなった「青いドレスの王女マルガリータ・テレサ」のお父さん)
マリア・テレジア
フランツ・ヨーゼフ1世(皇妃エリザベートも)

でしょうか。

20200110ハプスブルグ展2s.jpg
キィパーソンがキャラになっていたショッピングバッグがあまりにかわいくて思わず買ってしまいました。
フェリペ4世がわかりやすすぎる・・・(笑)

肖像画だけでなく、華麗な装飾が施された甲冑(実戦用と試合用)や、水晶と金細工のスプーン(すくう部分が水晶でできているのです・・・!なんて非実用的なスプーンなんだ)などもあり、ひゃーさすがハプスブルグ様ですよーと心の中で何度も変な叫び声を上げてしまいました。

終了間近と言うこともあって、中はめちゃめちゃ混んでいたため、音声ガイダンスが取り上げた作品と、気になる作品をピックアップして見るにとどまったのがとても残念ですが、まぁ仕方が無いか。
そうそう、音声ガイダンスは、東宝ミュージカル「エリザベート」でタイトルロールを張る花總まりさんと、声優の梅原裕一郎さんでした。
花總さんが情感たっぷりに、マリー・アントワネットとエリザベートの部分を読み上げるだけで、彼女の舞台姿が脳裏によみがえるのですから、さすがは元娘役トップ・オブ・トップですよ・・・と思いました。

これも、昨年の「日墺友好条約150周年」の企画なんですよね。
日本はウィーンで、これくらいきちんと自国の歴史を上手にアピールし、かつ求心力のある企画展をちゃんとやってたのかなー、とふと思いました。
1873年のウィーン万博こそ、明治政府が正式に初参加した万国博覧会であり、これをきっかけにジャポニスムがヨーロッパを席巻したんですけどねぇ。

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2020年01月07日

街角で出会ったハンガリー、の巻

■ちょっとお使いを頼まれて、そのついでに本日は麻布十番界隈をぶらぶらしておりました。
ふと道を曲がったら、遠目に見ても真新しいビルの1階と2階にかけて、何やら赤・白・緑の国旗のようなものが見えました。赤白緑と言えばイタリア・・・だけどなんだか雰囲気が違う?


近づいてみて判りました。そうだ、ハンガリー! ハンガリーもおんなじ赤・白・緑だ!
中は受付の方がお一人いらっしゃるだけで、後は閑散としています。
この界隈には、個人オーナーの画廊もポツポツあるので、画廊なのかしら? と思ってよくよく見れば、「ハンガリー文化センター」の文字。
どうやら、駐日ハンガリー大使館の、文化部の出張所・・・のような感じ?
面白そうなのでふらっと入ってみると、天井の照明がとても美しいこと!

20200107ハンガリー文化センター1s.jpg
ハンガリーの国旗のイメージと、同じくハンガリーの名産であるレース編みをイメージしているのだそうです。美しい・・・

画廊のように今回展示されていたのは、オロス・イシュトヴァーンという作家のだまし絵でした。
そして、もうひとつ!
VRの美術展が素晴らしく面白かったです!
今回VR企画展の対象になっていたのは、ハンガリーの建築家イムレ・マコヴェッツでした。
初めてその名前を聞く建築家ですが、この方は教会等を主に作っていた方のようです。
実際にその作品である木造の教会やその設計図、教会の尖塔の素描など、あたかも美術展の中に立っているかのように見られました。
中でも特に、ハンガリーのパクシュにある教会(”Makovecz, Templom, Paks”で検索すると画像が出てきます)の尖塔の素描がめちゃくちゃかっこよくて、この実物を現地で見たい!という欲求に駆られました。
でも、パクシュってどこら辺だ?

20200107ハンガリー文化センター2s.jpg
ハンガリー文化センター外観はこんな感じ。
ちなみに、VR美術展のデータは、これからどんどん増えていくそうです。
今はまだ、イムレ・マコヴェッツの展覧会だけです。

あー美術展はやっぱりいいなーとしみじみ思いました。
今年もまた、きれいなものをいっぱい見に、聞きに行こう!

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2019年03月06日

『奇想の系譜展』に行ってきました、の巻き

20190306奇想の系譜展.JPG
東京都立美術館にて。この『奇想の系譜展』の次には『クリムト展』が控えています。きっと混んでるんだろうなぁ…

■最近、お出かけが続いています(笑)
本日は上野の東京都立美術館へ、『奇想の系譜展』を見に行きました。
昨今の一大ブームで「伊藤若冲」を全面に押し出すと大行列・大混雑が起こってしまうのですが、この展覧会では「江戸絵画の”奇想”の画家のひとり」として取り上げられているせいか、比較的見やすい状態でほっとします。
というか、私は若冲目当てではなかったのですが、見やすくてラッキー⤴ という感じでしょうか。

今回の展覧会は、美術史家の辻惟雄(つじのぶお)先生の著書『奇想の系譜』に沿って(というと少々語弊があるかも。”参照して”が適切でしょうかね)、

伊藤若冲
曾我蕭白
長沢蘆雪
岩佐又兵衛
狩野山雪
白隠慧鶴
鈴木其一
歌川国芳

という、江戸絵画の画家の中でもとびきり「とんでもない絵を描く人たち」をダイジェスト的に紹介したものでした。

とはいえ、「この展覧会のために研究を進めたところ、新発見」して「今回初出展」という作品が結構あり、「研究が進めば進むほど過去に戻っていくものなんだなぁ」というパラドックスめいたことを痛感しました。
「その時代に生きた人」の「生の証言」が大切なことはもちろんですが、時代が下がってそういった証言や記録がまとめられ、俯瞰されることによってまた新たな発見があり、より一層「過去の出来事」に近づいていく。そういうことは、歴史を学んでいるとよくあることです。
それは美術史の世界でも同様なのですね。

今回の展覧会の中で特によかったのは、長沢蘆雪と岩佐又兵衛でした。
円山応挙の弟子だったという長沢蘆雪。円山応挙の弟子だけ合ってその写生画法は素晴らしいものがありました。特に、猿をたくさん描いた襖絵『群猿図襖』に描かれたお猿さんたちの毛ってばもうふっさふさで柔らかそうで、
「うはぁ、これを墨の濃淡と筆さばきだけで表現できるのか!!!」
と、見入るしかなかったのですが、一方で「応挙師匠と明らかに違う」のは、マンガっぽくすらあるデフォルメされた表情でした。
いたずらっ子のようなおさるたちのかわいさは天下一品。ずっとこの襖の前にたたずんで、一匹ずつ猿の表情を確認したい!
他にも、ひたすらナメクジの歩いた跡を辿るように描いた『なめくじ図』やら、墨と朱墨だけで描き上げた『方広寺大仏殿炎上図』(落款まで墨と朱墨で描かれており、どうやって書いたんだろう?と考え込んでしまいました)、人をからかってるとしか思えない『方寸五百羅漢図』(タイトルの通り、一寸=3センチ四方の紙の中に、五百羅漢を書き込んでいるちんまりした作品でした。でも、よーーーーく見ると人が密集してるっていう…)など、見どころ満載。

もうひとりの岩佐又兵衛は、織田信長に反旗を翻した荒木村重の息子、という生い立ちの面白さもさることながら、絵巻物が豪華絢爛かつ生々しくてサイコー!でした。これだけの金や色絵の具を使えるってことは、相当力のあるパトロンがいたってことだろうなぁ…と思ったら、その画才で以て主君に仕える「御伽衆(おとぎしゅう)」だったとか。なるほど、紙も絵の具も贅沢に使えた訳です。
中でも素晴らしかったのは『堀江物語絵巻』で御殿造りの門の屋根の細工に至るまで微細にゴージャスに描かれていて目を奪われます。
初出展だという、伝岩佐又兵衛(おそらく工房作)の『妖怪退治屏風』も楽しかった。
圧巻なのは『洛中洛外図屏風』で、これは実物を見たあと、図録で詳細を見ることをお勧めします。展示ケースに入っていて近くで見られないから、描かれている人々や建物をゆっくり見たかったらこの方法しかありません。

忘れてはならない国芳さんも、大方見たことのある作品が多かったものの、浅草寺に奉納された『一ツ家』(観音菩薩の化身の童子が美しくてうっとり)や成田山に奉納された『火消し千組の図』(国芳親分お得意の勇壮な火消したちの様子を描いた逸品)などは、はぁ…と長らくたたずんで見入っていました。たたずむことが許されるくらいの混み具合でよかった(笑)

若冲は言うに及ばず、ド迫力の達摩図がたくさん並ぶ白隠さんコーナー、『雪山童子』の童子(=釈迦の前世)のいたずらっ子のような表情が印象的な曾我蕭白コーナー、自然を極彩色でデフォルメして楽園のように描いた『夏秋渓流図屏風』の鈴木其一コーナー、王羲之が『蘭亭序』を書いたのはきっとこんな風景だったんだろうなぁと楽しくなった『蘭亭曲水図屏風』の狩野山雪コーナーなど、見どころ満載でした。

「奇想」をテーマに集められた展覧会だけあって、単に人を驚かせるような画題であるだけでなく、構図、色、輝き、筆さばきでも人々を大いに驚かせ、楽しませる名作揃いでした。
展示替えの後、もう一度いっても良いかもなー。

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2019年03月02日

河鍋暁斎「その手に描けぬものはなし」展に行ってきました、の巻

20190227河鍋暁斎展.JPG
河鍋暁斎といえば、蛙。展示室の間に、暁斎の蛙の絵を立体化したものが置いてありました。北斎展でもそうだったけど、こういう絵を立体展示するのって、ここ数年流行ってますよね。

■サントリー美術館は、美術館自体の収集物もなかなか通で粋な作品揃いのせいか、渋くていい展覧会が多い印象です。
特に絵巻がいい。今回の主人公・河鍋暁斎も絵巻を残しているので、なかなかいいものがそろう予感がありました。

■さてさて、河鍋暁斎には子孫の方が運営なさっている「河鍋暁斎記念美術館」という美術館が、西川口にあります。以前そこを訪ねた時の記録はこちらにありますが、「月曜から夜ふかし」をご覧になっている方ならなんとなくおわかりかもしれない…西川口は、昼間ならともかく、日が落ちてからだとちょっと女性一人で行くには気が引ける環境です。
展示替えも頻繁にあるようなのでまた行きたいなーと思ってはいても、なかなか腰が上がらない。そんな感じ。
さらに付け加えるなら、河鍋暁斎記念美術館は、個人病院(とはいっても入院病棟があるような大きな建物ではなく、いわゆる「町のお医者さん」のお宅)を改築しているので、展示スペースそのものが狭いのですね。
収蔵品は本当に「代々受け継いだ」逸品が多いのですが、場所と展示環境が少し残念。

…なんて印象をずっと抱いていたのが、今回のサントリー美術館の暁斎展でその「もごもご」とした気持ちが晴れるようでした。
「河鍋暁斎記念美術館」蔵の出展がとても多い!!!
これは、お蔵だしといっても良いほど!
これだけの作品を一気に見られるなんて幸せです。
一昨年の「ゴールドマン・コレクション これぞ暁斎」展は、ゴールドマン・コレクションがメインでしたが、今回は「暁斎記念美術館」がメイン!
それだけでも、私にとっては大変に「もうけもの」の展覧会でした。

■今回の展覧会は、「狩野派の絵師」の流れの中にある「河鍋暁斎」という視点での展覧会だったのが、とても興味深かったです。
例えば、暁斎の作品には蛙や猫を擬人化した作品、いわゆる「戯画」が多いのですが、それはこれまで幼い頃の師匠である浮世絵師・歌川国芳の影響であろうと言われてきたのが一般的でした。
しかし最近では狩野派でも同様の戯画が制作されていたという研究があり、暁斎は、国芳の影響はもちろん、むしろ狩野派の影響を強く受けていたと推測できる…というのはとても興味深い研究成果でした。
もっとも、戯画といえば鳥羽僧正の(といっても「鳥羽僧正が作者」とは確定していないそうですが)「鳥獣戯画」にもよく学び、暁斎流の鳥獣戯画も展示されていました。

そして、サントリー美術館収蔵の絵巻といえばこれ(…と決めつけると語弊があるかしら)「放屁合戦絵巻」。一昨年2017年の「絵巻マニア列伝」展ではメインの作品として展示されていたこの絵巻物、暁斎も同じく描いていたのですね💧 しかも暁斎、本当に上手で線が洗練されてるもんだから「いや、そこまでディテール描かなくても…」ってとこまで描き込んでる(笑)
でも、「真面目にやればやるほど面白い」のは絵画の世界でも変わらず、暁斎先生が真剣に描いちゃってるもんだから滑稽味がいや増す感じで、その展示ケースの前だけで何分たたずんでいたか判らないくらい、見入ってしまいました。
だって、本家(?)平安時代の「放屁合戦絵巻」と暁斎の「放屁合戦絵巻」が並んで展示されてるんですもん。あっち見たらこっち、こっち見たらもう一度あっち…って何往復もせざるを得ない。

ちなみに、平安時代の絵巻と暁斎の絵巻の一番の違いは、「暁斎が描いた方が、おならの線がシャープだった」(あえて強調)ということでしょうか(笑)
(ところで、もう時間も経ったことだし良いかなと思って描いておきますと…一昨年の「絵巻マニア列伝」展で、私は庵野監督ご夫妻をお見かけしました。絵巻物は右から左へと物語がよどみなく流れ、しかも字を読まなくても絵だけでわかるという明確さ、それでいて描かれている物語も面白い!というところで、とても映画的(しかも物語には妖怪とか想像上の生き物が山ほど出てくる)だと深ーく納得できたところだったので、庵野監督と絵巻物の組み合わせは、なるほど!と私の中で合点がいくものでした。)

■それにしても、「顔真卿」展、「新・北斎」展と、激混み展覧会を立て続けに経験したせいか、この「河鍋暁斎」展は大変見やすく、さして行列もなく、快適な展示空間でした。
ゴールドマン・コレクションからも名品が貸し出されていたし、最後にはお約束の「暁斎絵日記」が展示されていたし、暁斎ファンにとっては定番のしつらえだったのも、落ち着いた感じを醸し出していたのかもしれません。
展示のごく最初に、「え、これ18歳で描いたの!?」と度肝を抜かれる作品がひとつあっていこうはもうひたすら、
「あーもー暁斎先生天才、まじ暁斎先生に描けないものなかったよね!!!!」
と感嘆し、堪能することが許される展覧会でした。
せっかくなので、こちらも是非ご覧ください。おすすめですよ。


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2019年02月26日

新・北斎展に行ってきました、の巻

■六本木の方にいく用事があったため、ふと思いつきで用事が終わったあとに森アーツセンタギャラリーの「新・北斎展」に行ってきました。

20190221新北斎展1.JPG
実物を見るとその大きさに圧倒された(しかも北斎90歳の時の作品! 大きいしド迫力!)「弘法大師修法図」が、入り口でお出迎え。

何の事前情報も入れず、ふらっと立ち寄っただけだったので、
「入場まで70分ほどかかります」
とチケット売り場で言われた時、さすがに一瞬ひるみました。え、まさかそんなに人気のある展覧会だったの?と。
さすが北斎爺、人気者だわぁ…なんてひとりごちたり。

20190221新北斎展2.JPG
葛飾北斎期の「しん坂くミあけとうろふゆやしんミセのづ」を立体に起こしたもの

■さて、何が「新」なのか。少年時代に北斎の絵に魅入られたという永田生慈さんという研究者の、いわば生涯をかけた研究成果の発表のような展覧会だったのですね。その永田さんは惜しくも亡くなられたそうで、永田さんが収集された北斎の作品は「永田コレクション」として永田さんの故郷・島根県に寄贈されるとの由。すなわち、今回が「永田コレクション」が東京で展示される最後の機会になるのだそうです…って知らなかった。
70分並んでいる間に改めてスマホでいろいろな情報を検索し、その経緯に感銘を受けていると、並んでいる時間はあっという間に過ぎていきました
先だっての、「顔真卿展」で「祭姪文稿」を待っていた時と同じですね。

■展示は、北斎の雅号に沿って大きく5つのパートに分かれていました。
今回の展示で何より私が楽しく、また感慨深く見たのは、数々の肉筆画と、北斎の「デザイン画」(そしてそのデザイン画を元にして作られた印籠や値付けなどの工芸品)でした。
肉筆画の中でも特に素晴らしかったのは、為一期の「六歌仙図」(誰が書いても在原業平は男前なのね!)と宗理期の「娘図」でした。

20190221新北斎展3娘図.JPG
力の抜けた筆致で描かれた娘が色っぽく、と同時にどこか清楚さもある表情をしていて、「ああ、年若い娘さんがくつろいでいるんだなぁ」と判ってしまう。
早書きした線なのに洗練されていて美しく、間違いがない。
あまりに美しくて、何度も何度も見てしまいました。

「デザイン画」というのは、例えば帯留めやかんざし、値付けなどの小物の工芸品の下絵「工芸職人用下絵集」のことです。これって今でいうと「ジュエリーデザイナー」だよねぇ。北斎下絵の帯留めって、かっこいい。今でも使えそう!

もう一つ楽しかったのは、歌川国芳画による「日本奇人伝」下巻。
これは半紙本…すなわち白黒の版画本なのですが、その見た目の地味さ故か、展示ケースの前が大体いつもがら空きだったのですね。
なんとなく心引かれてその展示ケースに立ち寄り、しげしげと見てみると…この絵は北斎の人物画とはずいぶん違う。特に「北斎」と書かれている人物画の描き方…これは国芳親分の手癖っぽいなぁ…などと思ってキャプションを見れば、果たしてそこには「歌川国芳画」の文字が!
おお、私の鑑定眼も大分養われてきたな!などと悦に入っていたのでした。

■そして恒例?のオーディオガイド。今回は全体のナレーションを女優の貫地谷しほりさんが、作品にまつわる語りを、今をとくめく講談師・神田松之丞さんが担当なさっていました。
特にこの神田松之丞さんの、「四谷怪談」のさわりが絶品で、講談には一度も行ったことがないのですが、是非生で聞いてみたいものだなぁ、と思いました。

■「新・北斎展」とにかく混んでいました。それを制限するために入り口である程度人数制限して客入れをしていたのですが、中に入ってもやっぱり混んでいて…ちょっと見るのに難儀しました。洋画の展覧会と違って和物はどうしても、ガラスケースを見ることになるので作品を遠くから見ることができず、順番にじわじわ眺めざるを得ないですからねぇ。
なので、順番を待たずにあいているところからちょこちょこ眺める、基本的にはオーディオガイドに従ってポイントを眺める、というのが効率良い見学方法なのかな、と思いました。
それにしても、研究者であり蒐集家の永田さんの鑑識眼・美意識には恐れ入るばかりで、こうやって丹念にコレクションとして残してくださったその研究成果すべてに、感謝の念を覚えました。
良い展覧会でした。

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2019年02月23日

顔真卿展に行ってきました、の巻

20190220顔真卿展2紀泰山銘.JPG
展示の中で唯一撮影可能だった「紀泰山銘」。唐の玄宗帝が書いた隷書。山東省泰山の崖に刻まれているものの拓本だそうで、縦8.6メートル、横5メートル。なるほど、崖に彫られているからこのスケール! 納得!

■台北の故宮博物院には何度か行ったことがあり、そのたびにプライベートで現地ガイドを手配して、説明を伺っています。
ご存じの方も多いかと思いますが、故宮博物院はとにかく展示品が多く、一日で効率よく見るためにはやはりガイドさんをお願いするのが一番だと思います。
現地ガイドさんはとにかく博識な方ばかりで、特に青銅器の説明を聞くと、それまで全部同じに見えていた青銅器が、それぞれの意味や使い方、やがては当時の人々の生活や息づかいまで聞こえて来る気がします。
…なのですが、「書のご説明をお願いできますか?」と伺うと、大体皆さんちょっと困った顔をされて、
「書は作品の退化を避けるために、展示替えの周期が早くて、今何が展示されているかつかめないからガイドができないんです」
と申し訳なさそうにおっしゃいます。
確かに書のコーナーはひときわ暗いし、数が多くて、何を目的に見たら良いのかわからず散漫な感じがします。

なので、故宮博物院でお目当ての書を見る機会は実はなかなか少なく…今回の初来日「祭姪文稿」のように目玉作品が一点どーんと、しかも詳しい説明付きで長期間展示されるのは千載一遇のチャンスでもあります。
これは確かに、漢字文化圏の人たち、特に中国の人たちが見たくなるのは仕方がない。というか、台湾が日本に貸し出したことを妬まれても、ある意味仕方がない(でも、本音を言えばこれが台湾に保管されていてよかったと心底思います。…戦後に始まった現在の中国政府だったら、今日までの間に、文化大革命だのなんだので、燃やされたり破壊されていた可能性があったから)。
実際中国人の観覧客がとても多く、あちこちから中国語が聞こえてきました。

ちなみに私は、「祭姪文稿」を見るために約70分ほど並んだはずです。時間を計っていなかったので実際にどうだったかわかりません。でも、そんなに気になりませんでした。
オーディオガイドを借りていたので、作品解説以外の、「王羲之について」「顔真卿について」などのワンポイントレッスンを聞いたり、何より、声優の関俊彦さんによる鬼気迫る「祭姪文稿」現代語訳朗読を聞いたりしていれば、案外あっという間に過ぎてしまうものでした。

「祭姪文稿」の成立経緯はWikipediaにも載っているので省略しますが、これは、顔真卿の恨みと哀悼と祈りの詩句なのですね。
実際に見ると、最初のうちは読みやすい楷行書体で落ち着いた書かれていたものが、段々と筆がのって早書きになった様子や、何度も推敲された跡が生々しく残っています。
本物を見られたのは1分くらいの間ですが、並んでいる間に、関さん朗読による顔真卿の慟哭を何度か聞いていると、言葉を尽くして己の感情を表し祈りを捧げる顔真卿の様子が、行間に立ち上がってくるようでした。

この、「感情の生々しい記録」こそが、「祭姪文稿」が人々に愛され鑑賞されてきた理由なのだと思いました。

■事前にその他の展示品をチェックしていなかったのですが、日本の書の代表として、空海・嵯峨天皇・橘逸勢の書が同じ部屋にきゅっと展示されているのも素敵でした。
そして、書の展覧会で「あ、いいなぁ…」と思うとその名が出てくる北宋の書家・米芾の作品もあって、個人的には気分がかなり上がりました。

20190220顔真卿展3米芾.JPG
米芾による「行書虹県詩巻」。あらゆる墨の分量や色味に対応し、どんな字体も無理なく自由闊達に、それでいて品良く書きこなす米芾に憧れるのですね。そう、米芾の書には、品の良さを感じるのです。

展覧会の最後の最後に展示されていたのが、趙之謙だったのも、個人的につぼでした。今、ちょうど趙之謙の隷書を臨書しているところだったので。

■偶然なのですが、私が訪れた日の夕方、おそらく閉館後に天皇皇后両陛下も「顔真卿展」にお出ましになったと知り、なんとなくラッキー!な気分になりました。

20190220顔真卿展1.JPG

「顔真卿展」は明日まで。
漢字文化圏の至宝を貸し出してくれた台湾政府と故宮博物院の方々のご好意に、感謝せずにはいられませんでした。

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2017年08月24日

月岡芳年「妖怪百物語」展に行ってきました、の巻

■昨日は二十四節気の「処暑」…暑さが一通りおさまってくる節に入ったそうですが、ここ東京ではようやく昨日から夏らしい天気に戻ってきたようです。
今日はことに暑かったです。
でも、吹く風の芯の部分にはちょっとだけ涼気が感じられ、ああ確かに季節は秋に向かっているんだな、と思います。そういう意味で、今年は夏がないまま過ぎてしまったのかもしれません。

■でもせっかく夏なので!(笑)夏といえばお化け・妖怪の類のシーズン、ということで、原宿にある太田記念美術館の「月岡芳年 妖怪百物語」展に行ってきました。

20170824月岡芳年妖怪絵展4.jpg
土蜘蛛がファンシー!
「バベルの塔」展がマスコットキャラにしていた「タラ夫」並みにいいと思うんですが、どうでしょう?

ちなみにこの土蜘蛛は、化け物退治で有名な源頼光にそっと蜘蛛の糸でできた掛布団をかけ、蜘蛛の糸でからめとろうとしているところです。お茶目。

月岡芳年といえば、歌川国芳の弟子の一人で幕末から明治期にかけて活躍した人気浮世絵師。
師である国芳の画風をとてもよく伝える人ですが、明治期に入ると西洋画の影響を受け、登場人物の顔がどんどん西欧人ぽくなっていくのはとても興味深かったです。ヒーローがみんな、現代にいたら「濃い顔の男前」に描かれているのが面白い。
女性も多少「濃い顔」よりになっているのですが、うりざね顔ですっとした美人が相変わらず多いのと比べると、男性の「濃い顔」化のほうがより顕著なのはどうしてなんでしょうね。
今回の展覧会の中では、あからさまに金髪の人もいたりして、明治期に日本にやってきていた西欧人は、やはり男性が多くて、モデルになった人もそういう人たちだったからかもしれません。

それにしても芳年さんの、幽霊や化け物の類にかける情熱たるや、圧倒されます。
同じく国芳の弟子(…といっても、ほんの子供の頃の2、3年間だけだったのに、生涯に亘って影響を受け続けた)河鍋暁斎の妖怪にかける熱量にも圧倒されましたが、「奇矯なるもの」への憧れは芳年も負けていません。
どうやら霊感があったらしいし、怪談話も大好きだったらしいので、芳年にとっては幽霊・化け物の類は、「親しい隣人」だったのでしょうか。
そして、結構描き方がひどい(笑) 誉め言葉としてですが、かなりひどくてやりたい放題です。

例えば…
20170824月岡芳年妖怪絵展3.jpg
阿弥陀如来。ひどい(笑)
もっともこれは、「阿弥陀如来に化けた妖怪」なので、こんな感じに処理されたのでしょうが、もうひとつ…

20170824月岡芳年妖怪絵展2.jpg
これも、「阿弥陀如来に化けた妖怪」。ひどい(笑)
このモチーフ、好きだったのかな。

とにかく「やりたい放題」で、殊に幕末期、師匠の国芳の影響が強かったときは、「あれもこれもやりたい!」という気持ちが勝っていたのか、サービス精神なのか、構図もあれやこれやモリモリなことになっています。
それが、明治期になったとたん、随分とスッキリと落ち着いてスマートな構図になっていたのは…「時代の空気」が変わったせいなのでしょうか。
幕末の気ぜわしさや落ち着かなさが、明治に入ってずいぶんと定まって冷静かつシンプルに移り変わっていくのは、実に面白いと思いました。

太田記念美術館は来月も月岡芳年特集で、今度は月をモチーフにしたシリーズ「月百姿」展となります。
こちらも楽しみ。
来月も太田記念美術館に足を運ぶ予定です。

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2017年07月06日

「バベルの塔」展と「アルチンボルド」展に行ってきました、の巻

■長い長い、と思っていた展覧期間も、あっという間に過ぎていくものです。
そういうことは判っていたのに、後回しになっていた「バベルの塔」展を見に、東京都美術館に行ってきました。

20170702バベルの塔展.jpg
あんなにTwitterで出回っていた等身大?タラ夫には会えませんでした。残念…

東京での公開は7月2日まで。
私が行ったのは7月1日。
当然のことながら、激混みでした。
チケットを買うのにまず並び(でもここは10分くらいだったでしょうか)。
チケット買ってから入場するのに40分くらい並んだでしょうか。館内で列になっていたので空調は効いているはずなのに、やっぱり暑い。じっとりと汗がにじみます。間を詰めて並ぶように言われていたせいかもしれませんが、人いきれって凄い熱量を発するものなんですねぇ。このエネルギーを何かに活用できないものかしら(笑)



さてさて、私はこの展覧会に関して事前に友人から聞いていたことがありました。
これから大阪に回るそうなので、もしかしたらネタバレになってしまうのかもしれませんが…
(ネタバレ回避したい方は、次のパラグラフまで飛んでください)
本展覧会のメイン作品である「バベルの塔」は、一番最後に飾られています!
それまでは、主にブリューゲルの先蹤ともいえるヒエロニムス・ボスの作品が多く、「バベルの塔」だけが目当ての方であれば、いっそ潔く全部飛ばして、「バベルの塔」だけ見る、という手もあるかもしれません。


今回の展覧会はブリューゲルの「バベルの塔」が24年ぶりの来日、ということが大変話題になっていましたが、実際の展示内容はどちらかというとヒエロニムス・ボスの、しかもエッチングが多かったな、という印象を持ちました。
エッチングってそもそも、そうそう大きな作品はありませんので、どうしても見学する際には壁に一列に並んでじっくり見ることになります。
日本人は礼儀正しく、順番をきちんと守って見る方が多いので、その習性がどうしても混雑を引き起こしてしまうのかな、とちょっと思いました。
エッチングは、浮世絵と同じく、絵の中に込められている情報量が多いので、私はその辺りを見ることを放棄して(その分展覧会の公式プログラムを買うことにしました)、油彩画を見ることに集中しました。
ボスの大作として来日したのは、「放浪者」と「聖クリストフォロス」。
「聖クリストフォロス」とは、川渡しをしていた巨人クリストフォロスがある日、小さな男の子に請われていつもの通り川渡ししようとしたところ、その小さな男の子がどんどん重くなっていき、実はその男の子こそイエス・キリストだった、という伝説を持つ聖人の一人です。
小さな男の子が重かった理由は、「全人類の重さをその男の子が背負っているからだ」という解釈がなされています。
ただ私はどちらかというと…子泣き爺のイメージが強く(すみません)、「小さな男の子が思いがけず重くなる、という伝承はどこにでもあるものなんだなぁ」と、この画題を見るたびにしみじみ思ってしまいます。
ボスの「聖クリストフォロス」は、小さな男の子=キリストが颯爽とマントを翻してクリストフォロスの背に乗っている姿が大変凛々しく気高く、素直に「おお、イエス様だ! かっこいい!」という気持ちを喚起する、大変よい宗教画だと思いました。

で、この「聖クリストフォロス」と並んで、この展覧会にメムリンクの作品も来日しており…そう、この時代の宗教画だったら、私は圧倒的にメムリンクの方が好きなのでした!
メムリンクの作品はとても感情が落ち着いていて、静謐さに満ちており、祈祷の対象となる宗教画としてはこちらの方が見ていて落ち着く気がします。
一方のボスの作品群はどこか…気持ちがざわざわするのです。

さて、本命のブリューゲルの「バベルの塔」ですが、じっくり見るために絵の前の最前列は一列になるよう誘導されます。その後ろは幾重になって立ち止まってもいいのですが、最前列だけはちょっと流れ作業っぽい。
ここに至るまでに結構人酔いしていたので、「バベルの塔」の場所まで来ると、「やっと見れた!」という達成感の方が先に立つのは否めませんでした(笑)
ところで、このバベルの塔に触発され、漫画家の大友克洋さんが描いた「Inside Babel」という作品が、会場の前に飾られていました。入場する前、列に並んでいるときにじっくり見られたのですが、これがとてもよかった。
「Inside Babel」はあくまで「バベルの塔」にインスパイアされてできた作品ですが、先にこちらを見てから本物の「バベルの塔」をみると、「そうか、外側はこうなってるのね〜」と逆に思え、比較するのが楽しくなりました。
大友さんの「Inside Babel」も一緒に巡回するのでしょうか?
これ、一緒に並べて展示したらきっと面白いんだけどなぁ。

「バベルの塔」展は、「混んでたな」という印象の方が強くなってしまったのがちょっと残念でしたが、なかなかいく機会のないロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館所蔵の作品を日本で見られる、というのは得難い経験ですし、この美術館の目玉の一つに違いない作品を招聘できた日本の美術館の方々のご尽力に感謝の念を覚えました。

■さて、「バベルの塔」展が開催されていた東京都美術館は上野にありまして、上野には美術館・博物館が集まっています。なのでまとめて回ってしまった方が効率がいい…
ということで、気になっていた国立西洋美術館の「アルチンボルド」展も、「バベルの塔」展の後に行くことにしました。

20170702アルチンボルド展.jpg

「アルチンボルド」展はまだ始まったばかりだからでしょうか、「バベルの塔」展に比べるとあからさまに人が少なくて、じっくりとゆっくりとみることができました。この鑑賞環境が維持されているのがとてもよかったせいなのか…正直に言うと、私はアルチンボルド展の方が印象がいいです(笑)
大きい作品がゆったりと展示されている、というのも理由の一つかもしれません。

今回のアルチンボルド展の目玉は、「四季〜春夏秋冬」と対になる「四大元素〜大気・火・大地・水」が、それぞれペアで向き合うように展示されていたことでした。
じーっとみるとちょっと気持ちが悪いのですが、ふっと目の端にある分には色も落ち着いているし、華やかさもあって、インテリアにちょうどいい。
それがアルチンボルドの作品がハプスブルク家に愛され、収蔵された理由のような気がしました。
基本的に、背景は黒一色。そこにパステルカラーが乗っているのですから、美しくないはずがない。
このコントラストを思いつき、追及して続けただけでも、アルチンボルドという人が偉大な才能を持った人だったのだな、と思います。
「寄せ絵」という奇想にどうしても注目が行きがちですが、私は彼の色彩センスがとても好きでした。
その「センスの良さ」は、アルチンボルドがハプスブルク家の様々な祝祭典の行事に関わる、コスチュームデザインを初めとしたあらゆるコーディネートをした、ということにも表れていたように思います。
アルチンボルドのデザインがも今回来日していたのですが、それぞれの職業(天文学者等)にまつわる衣装のデザインがとても美しく、こういう紛争をした人々が集った行事はどれほど壮麗で、ハプスブルク家の威厳を保つのに有効だっただろう…なんて想像すると楽しくなります。
多分、ものすごい大イベントで、それはそれは華やかなお祭りだったはず。

正直に言うと、アルチンボルドの作品がたくさん収蔵されているウィーンの美術史美術館では、他に見るものが多くて、アルチンボルド自身の作品に注目してこれまで見てきたことはありませんでした。
アルチンボルドの出現が、後の静物画につながったというのもわかるとおり、彼の作品は緻密で落ち着いていてあまり熱を感じないからかもしれません。
今回こういう風にまとめてみる機会がなければ、私もこの画家の素晴らしさに気が付けなかったかもしれません。
もうそれだけで充分、私にとっては価値のある展覧会でした。

ちなみに、アルチンボルドはレオナルド・ダ・ヴィンチに深く私淑していたとのこと。
あ、今三菱一号館美術館で、「レオナルドxミケランジェロ」展やってるじゃない!
わーこっちも見に行かないとね〜

舞台やクラシックのコンサートよりは値が張らなくて助かりますが、美術館・博物館見学も、一度見てしまうと次から次へと見たいものが増えてしまって、本当に困ります。

ちなみに、アルチンボルド展の音声ガイドでは、竹中直人さんがアルチンボルド役を演じていらっしゃいます。いささか大仰に過ぎるのではないか、と思いましたが、16世紀っぽい感じ(シェイクスピアも同時代の人だし)ってこういう感じかな〜と想いを馳せるにはちょうどいい感じではありました。

アルチンボルド展て巡回するんでしょうかね?
巡回するなら、地味にいい展覧会だったので、ぜひ多くの人が見られるといいな、と思いました。

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2017年06月07日

「ミュシャ展」終わりましたね、の巻

■関東が梅雨入りしたそうです。
先日、突然の雷と夕立に遭遇し、
「ああ、今年の梅雨も晴れの日の夕方に突然雨が降る、っていう感じになるのかな」
となんとなく思いました。
もうここのところ何年か、梅雨というと「昼間晴れてて夕方に豪雨、被害が出る」というパターンに変わってきたような気がします。
以前のように、「いつもなんとなく曇天で、だらだらと雨が降る」というイメージが遠くなりつつある。
天候の変化は地味に体に響きます。
そして人の感性も変えていくような気がします。
歳時記もちょっとずつ言葉を変え、イメージを変えていくのでしょうか。

■さて、お祭り騒ぎのように国立新美術館の「ミュシャ展」が先日月曜日、6月5日に終わりましたね。
私は4月の平日に見に行ったのですが、その時は待ち時間20分くらいでした。
最終日前日の6月4日日曜日は、「待ち時間140分」なんてtweetを見かけて、本当に驚きました。
でも、その気持ちはわかる。
だって、「スラブ叙事詩」が全編チェコ国内から運び出されるなんて大イベントに、ちょっとでも乗っておきたいじゃないですか。
以前からの美術ファンはもちろんですが、お祭り的にこういう企画展示が盛り上がることを、私は大変結構なことだと思っています。
私は書道をやっていて、書道の師匠を初め書家の方々とお話しする機会があるのですが、どんな文化であれ「盛り上がってお金が回ること」はとても大切なことなのです。
それが次の可能性を生む。
教会や国の首長など巨大な権力と資金を持った存在がパトロンとなり、芸術家を養っていける時代はもう遠くなりました。
けれど芸術や文化は、やはりそういう「ビジネスモデル」で今も養われています。
資金の規模は小さくなったけれど、国や企業やほんの一握りのお金持ちというパイを、文化芸術を志す人たちが取り合っている…そんな感じです。
芸術家は貧乏なのが当たり前とか、絶対嘘ですから。
お金はあればあるだけいいんです。
その分だけ買える自由は必ずある。

■…てなことを、ミュシャ展に行っても改めて感じました。
今回のこの展覧会の目玉はなんといっても、「スラヴ叙事詩」がすべて一斉に展示されるということ。そもそもスラヴ叙事詩がすべてチェコ国外に出ることが初めて、だというのだから、この一大事業を企画し、実現した国立新美術館のスタッフのみなさん、元々スラヴ叙事詩を展示しているプラハ国立美術館のスタッフの皆さん、そしてこの企画に携わったすべての方々に、感謝するしかないです。
よく貸し出したよね、チェコ…自分たちの国の宝みたいな絵のはずなのに。
今回の展示については越えなければならなかった壁があったようですが、いずれそういう裏側の話まで一つにまとまって読めたらいいなぁ、と思います。

20170607ミュシャ展2.jpg
さて、ご存知の通りスラヴ叙事詩は一つ一つの作品がとても大きいです。
そしてその大きさに圧倒されます。
みんな、見上げながら歩く感じなんですが…正直、
「よく人が転ぶとかして、絵に傷がつかないですんだなぁ…」
と思うくらい、結構作品に近づいて鑑賞できました。
私はとても、あの距離が怖かったです。上を向いて歩いている人同士がうっかりぶつかって、ちょっとずるっとこけてしまったら、たちまち絵に手をついちゃいそうな…まあ妄想なんですけど、そういう怖い想像をするくらいに近いなと感じました。
しかも、一部はこうして写真撮影も可能になっている(撮影したのは「聖山アトス」です。この光の入り方がとにかく美しくて、長らく見つめてしまった1枚でした)。

20170607ミュシャ展1.jpg
ミュシャの息子がモデルになっている絵。

さて、スラヴ叙事詩は本当に美しかったです。
これは、見に行った人全てが間違いなく首肯するところでしょう。さすがにこれを「美しくない」という人がいたら、へそ曲がりか文句を言いたいだけの人なのかな、とその人に対して偏見を持ってしまいそう。
ただ付け加えるなら、この作品群を私は少し「怖いな」と思ってみていました。
その大きさと美しさに身震いするだけでなく、そこから発生する「圧」に息苦しくなった、というべきか。
この絵の主題なのだから当たり前なんですが、あまりに「スラヴ民族」押しが強くてその熱に圧倒され、言葉を失ってしまう瞬間がありました。
そういう風に、わざと人を煽るように描かれた絵でもあるのだということがひしひしと伝わってきます。
かなり、メッセージ性の強い作品です。

例えば、浮世絵なんかも書込みや説明書きがとても多くて、そういう意味では情報量が多い絵なのですが、なんでしょう、浮世絵の「情報量の多さ」というのは、ぺちゃくちゃと市井の人々がおしゃべりするのを聞くような、そういう他愛のなさを感じるのですね。
でも「スラヴ叙事詩」は人を扇動するためアジテーションの要素が強い、そういう「情報量の多さ」に圧倒された気がします。
そうやって分析する前の、自然に出てきた感情が、私の場合「怖い」という一言に集約されたのだと思います。

「スラヴ叙事詩」はとても美しく、そして怖い作品でした。

■ところでこの巡回展、このあと中国・韓国・アメリカに回る…という情報を、ネット検索して知りました。
どれだけの期間、チェコからこの作品がいなくなるのかわかりませんが、大きな決断が下されたものだなと、改めて思いました。

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2017年05月15日

「絵巻マニア列伝」展に行ってきました、の巻

■これ、「六本木開館10周年記念展」という冠がついていました。
え? 六本木ミッドタウンができてもう10年経つの?という驚きが先に立ちました。
時のたつのは本当に早いと、最近実感させられることが多いです。

■4月は体調不良でとにかく「人ごみになるべく出ないで寝ている」ことを優先していたので、あっという間にこの展覧会の会期期間が終わってしまいました。
絵巻はあんまり長期間展示できないですものね。仕方がない。
で、どん詰まりの最終日に行ってきました!
最終日でもっと混んでるかと思ったのですが、予想に反してそうでもなく…もちろん、絵巻は棚に置く以外の展示方法(壁掛け等ほかの展示手法)ができないため、どうしても人気のある絵巻では行列ができてしまうのですが、それでもストレスになるほどの行列はなかったので、やはりあまり混んでなかった、というべきなのでしょうか。

20170514サントリー美術館絵巻マニア列伝.jpg

右から左へと時間が流れている絵巻は、一度見慣れるとマンガを読むような感覚になるのが大変面白かったです。むしろ、右、左、斜めと視線移動の「クセ」になれる必要がある現代の漫画の方が、より複雑かも。
今回は皇族や貴族が収集し、天皇(上皇)のお墨付きまでがセットになっている絵巻が多かったので、印象に残るほど鮮やかなものは、有名な寺社仏閣の縁起絵巻に集中していたような気がします。
これらの中でも印象的だった縁起絵巻は「石山寺縁起絵巻」。
鎌倉時代にオリジナルが作られた後、室町時代にも写しが作られ、さらに江戸時代に下って松平定信(この方も「絵巻マニア」の一人に列せられていました)の助力を受けつつ谷文晁も写しを制作していた、という時代ごと(でも描いている場面は全てオリジナルに準拠しています…「写し」=コピー本なので)の絵巻がありました。
「あ、これさっきもあった!」
ととっさに思い出させたのは、展示の構成の妙だったのでしょう。

さて、お寺や神社の縁起絵巻以外といいますと、物語系の絵巻がやっぱり楽しかった!
特に人気があったのは「放屁合戦絵巻」だったようで、これとこれに連なる絵巻は、整列鑑賞するように美術館の方が列の整理をしていらっしゃいました。

まず前段として「福富草紙」というものがありました。
これは高向秀武という人が夢のお告げで「すばらしいおなら」を出す芸…要するに「放屁芸」を体得し、貧しい生活から脱して時の中将にもそのおならを披露するほどの立場とお金を手に入れることができました、というお話。
おなら!!!
すばらしいおなら!!!
なんというパワーワード!!!(笑)
このお話は当時の人たちの心に深く刻まれたらしく…なんとこれを受けての絵巻ができます。

それこそが、「放屁合戦絵巻」。

もう、タイトルの通りです。
音の大きさはもちろん、臭さとか、量とか(だって複数人が一つの大きな袋におならを貯めてる絵があったりするんだもん(笑))、パワーとか、多分長さや音階?などにこだわったおならを、様々な人たちが発している場面が延々と描かれている、そういう絵巻です。小学生男子かよ(笑)
しかし、創意工夫を凝らした「おなら」芸合戦にも、ラスボスが登場します。

それがなんと、「福富草紙」で描かれた秀武さんの娘だと名乗る、「尼公」なのです!
まさかの女性!
しかも「放屁の名家」の末裔!!
その尼様ってば、絵巻の最後に…おしり丸出しにして「すばらしいおなら」を発している姿が描かれているのです。

これだけでも抱腹絶倒の「放屁合戦絵巻」ですが、後祟光院の奥書がついているところが、またニヤリとしてしまうのです。まさに「極め付け」。親王様ってばおならの話に奥書書いちゃってる!(笑)

展覧会のタイトルが「マニア列伝」ですから、この後祟光院は間違いなくマニアの一人。
その息子である後花園院もその血を継いで絵巻マニアだったそうで、音声ガイダンスによれば、父・後祟光院と息子・後花園院の間で絵巻の貸し借りがあったらしく、父子で絵巻をみながらキャッキャしていたのかと思うと、「人間関係」に心惹かれてたまらない私としては、妄想たくましくして楽しくなってしまうのでした(笑)

他にもBL絵巻…じゃなかった、稚児絵巻「芦引絵」(ここは特に整列鑑賞でもなかったんですが、なんだか山のような人だかりで、ちゃんと見られなかった…ちょっと残念)があったり、人間が死んでからどのように肉体が変化していくかを活写した「九相図」(これは腐っている様はちょっとグロテスク)とか、見ているだけで色々な想像や妄想がたくましくなってしまう、大変脳に刺激のある展覧会でした。

絵巻って面白い。
マニアになる気持ちもちょっと…いや、かなり判る(笑)
音声ガイダンスが、
「今日また一人の絵巻マニアが誕生したら嬉しく思います」
といった言葉で締めくくられていたのですが、マニアになるかはわからないけれど、これから絵巻の世界の扉を開けてみよう、と思う人間がここに一人誕生しましたよ!

浮世絵もそうなのですが、絵巻は一つの絵に込められた情報量が半端なく多いので、もっとじっくり鑑賞したかったな。
いやあ、いいものを見ましたよ。

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posted by Lilalicht_8 at 20:46 | Comment(0) | 展覧会

2017年05月11日

「ゴールドマン・コレクション これぞ暁斎」展に行ってきました、の巻

■今回のこの「ゴールドマン・コレクション」による河鍋暁斎展、私は4月に渋谷文化村ミュージアムで見ましたが、現在巡回展示が高知に行っているようです。
その後、京都と石川に行くようなので、早めにおすすめ記事を書いておこうと思います。

■私は、河鍋暁斎という江戸末期から明治にかけての画家に、とても興味を持っています。
興味を持ってまだ日が浅いので、先達の皆様に突っ込まれると「ひゃーっごめんなさい、ごめんなさい!」と頭を隠して逃げたくなってしまうのですが、恐る恐るその世界に踏み入っている感じです。

河鍋暁斎の何に興味を持ったか。

1つ目は勿論、圧倒的な画力。今回の展覧会を見にいった友人が、「河鍋暁斎って天才だったんだねぇ」としみじみ言った通り、特に今回のように肉筆画が多い展覧会だと、その圧倒的な筆力にひれ伏すしかありません。この勢いと破天荒さ、そこに通底する「確かさ」と「几帳面さ」にただただ恐れおののき、溜息をついて展覧会を回っていました。

2つ目は、彼を取り巻く人間関係の面白さです。
歌川国芳の弟子(弟子だった期間は本当に短いけれど、画風の基礎はここにあると思います)であり、ジョサイア・コンドルを弟子にしていた人。
もう、これだけで面白すぎます。
以前、赤坂迎賓館見学台湾旅行の記事でジョサイア・コンドルとその教え子たちについて触れましたが、私は、
「弱冠24歳の英国人建築家(それまで設計図は書いたことがあっても、実際に建物を建てた経験は無し)と、ほぼ同い年くらいの西洋建築を志す日本の若き技師たち」
という「黎明期の西洋建築学教室」の様子を想像するだけで楽しくなってしまうのです。や、妄想なんですけどね(笑)
そんな、「ジョサイア・コンドルを取り巻く人間関係」の中で、間違いなく輝く一等星なのが、コンドルが敬愛してやまなかった河鍋暁斎でした。

そんな「一等星・河鍋暁斎」の海外流出した作品が、ゴールドマンさんという方の一大コレクションとして日本に里帰りした展覧会、それが今回の「これぞ暁斎」展でした。
つまり、日本国内には通常ない作品ばかりなわけで、これは見に行かないわけにはいきません。

20170511河鍋暁斎展.jpg

■今回の展覧会の図録の冒頭に、暁斎コレクター・ゴールドマンさんが言葉を寄せていらっしゃいます。
なぜ暁斎を集めるのか?と問われて答えたのが、
「暁斎は楽しいからですよ!」
ああ、わかるわかる! そう、楽しいんですよね。
画題も様々だし、技法も様々。迫力がある仏画や、愛嬌のある動物の戯画。
特に今回の大目玉作品は、「百鬼夜行図屏風」で、これは是非実物を見ていただきたい。
付喪神たちが暗い夜道を楽し気に、きゃっきゃと声を上げながら練り歩く様子が、実に生き生きとユーモアたっぷりに描かれています。
これに付随して、河鍋暁斎美術館主催で、作家・京極夏彦さんが講演会をなさったんですよね。聞きに行きたかったけど、まだ大丈夫と思ってるうちに、満席になっていた…残念。
眼光鋭いカラスの絵の数々。
以前、三菱一号館美術館で行われた「画鬼・暁斎」展では長蛇の列になっちゃっていてみるのをあきらめた、春画のスペースもたっぷりとられていました。

そして、最後の仏画のコーナーに来て、非常に目を引かれる「達磨半身図」がありました。
今回もイヤホンガイドを借りていたのですが、そのイヤホンガイドでも当然取り上げられていた、その達磨図。
それこそが、ゴールドマンさんが暁斎コレクションを始めるきっかけになった、コレクションの中でも重要な位置を占める絵であり…元はジョサイア・コンドルの収蔵品だったそうです。
ああ、ここでやっぱりコンデール君(暁斎絵日記には「コンデール君」が頻出するので(笑))が絡んでくるんだなぁ…師匠の一級品はコンデール君が持ってたんだなぁ。
「人間関係好き」の私にとっては最上のオチがついて、展覧会を見終えたのでした。

■さて、ここからはちょっとしたおまけです。
「これぞ暁斎」展を見終えて勢いづいた私は、埼玉県蕨市にある「河鍋暁斎記念美術館」に行くことにしました。
ただ、最寄り駅が西川口駅で…うーん、ちょっと一人で行くには腰が重い。
というわけで、付き合ってくれる友人二人(うち一人は男性)と一緒に行ってきました。
うん、複数人数…特に男性が一緒に行ってくれてよかったかな。
西川口駅周辺は、なかなか私の日常の中にはない世界で、正直ぎょっとしました。駅前をちょっと越えれば、いたって普通の住宅街なんですけど、そこに到達するまでに右往左往してしまう感じ。
そんな住宅街の中に、河鍋暁斎記念美術館はありました。
小さな美術館でしたが、とてものんびりした空気が漂い、収蔵品もいいものがあるなあ、という印象。
なにより美術館の方たちがとても親切で、色々と質問してしまう私たちに大変良くしてくださいました。
一人で行くのは気が引けるけど…でももう一回くらい、ゆっくり見に行きたいです。

■というわけで、「これぞ暁斎」展はゴールドマンさんのご挨拶と、最後のオチ(個人的に「オチ」と判断しました(笑))がとてもツボにはまり、かつとてもいい内容の展覧会でしたので、興味のある方はぜひどうぞ♪

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2017年04月28日

三菱一号館美術館「オルセーのナビ派展」に行ってきました、の巻

■この展覧会も5月21日までらしいので、お出かけになる方はお早めに〜という気持ちも込めて、早めに記録しておきます。

■この展覧会、副題に「美の預言者たち〜ささやきとざわめき」とあります。
20170411ナビ派展.jpg

ナビ派、ってご存知でしたか?
不勉強をさらすようで恥ずかしいのですが、私は知りませんでした。
一緒に行った友人や、大学で美術史を修めた妹は知っているようでしたが、ポスターにもよくよく見ると、
「はじめまして、ナビ派です」
という文言が入っている。
「ナビ派」をまとめて企画展にするのも、どうやら日本で初めてらしい。なるほど。
んで、ナビ派って大体どういう人たちで、そもそも「ナビ」ってどういう意味なの?というところから、私は始まりまして。
ナビ派に属する人たちは、こんな人たちらしいです。

20170411ナビ派展2.jpg
あれ、よく見ると先駆者としてゴーガンがいたりする。
厳格には「ナビ派」ではないけれど、ナビ派の基礎的な考え方を示したのが、どうやらゴーガンらしいのです。
で、あと知ってるのは…ドニとかボナールとかは、知ってる。…でも、印象派に属する人たちだと思ってたよ。

…と、私が誤解していたのも当然で(←悪い開き直りの典型例です(笑))「ナビ派」というのはざっくりいうと、友達とその友達程度のごく少数(10人いないくらいの)が週末ごとに仲間の家に集まって芸術論をかわし(といっても雑談みたいなのが多めの、要するに「ちょっと上品な飲み会」みたいな感じだったらしい)、活動期間としては10年くらいで友好的に解散した…そしてここが「肝(キモ)」なんですが、

「お互いに『○○の預言者』『××の預言者』とあだ名をつけて呼び合っていた」

という…今でいうと、同人誌のサークルみたいな感じ?だったらしいのです。
え、もしかして「ナビ」って…「預言者」の事か!(笑)
わー中二病っぽいー(←名前を由来を知った瞬間の反応(笑))

実際「日本かぶれの預言者」とか「ズアーヴ兵の預言者」(本当に兵隊だったわけじゃなくて、髭を生やした風貌がそれっぽかったかららしい)とか、わー仲間内でわくわくしながら呼び合ってたんだろうなぁ、というほほえましい様子を妄想たくましくしてしまう、若手芸術家グループだったのだそうです。
(そして、そういう「仲間内できゃっきゃしている感じ」、嫌いじゃないです。むしろ基本的には大好物です(笑))

「ナビ派展を見てきたんだよ」
と妹にいったら、

「えー、いいな、ナビ派っていいよね。ほんわかしているし、色が優しいし、テーマになってるものも子供とか家の庭とか、あと猫多めの絵が多くて」

という答えが返ってきたのですが、もうこの妹の言葉こそ、百点満点の「ナビ派」だと思いました。
テーマが非常に身近で(隠れテーマとしてキリスト教の要素があるのは仕方がない。ヨーロッパはそのようにできてきたので)、パステルカラーが多用され、そして平面的でポップ。
「日本かぶれの預言者」(=ボナールの呼び名だそうです)がいることからもわかるとおり、「ナビ派」ができたころはパリ万博で浮世絵が紹介され(その前から、包み紙として浮世絵が使われていたりして、素地はあったようですが)、多くの画家が「ジャポニズム」に傾倒していたころでした。
言われてみれば、チケットに使われているボナールの「格子柄のブラウス」というタイトルの少女と猫の絵。
この白と黒のにゃんこは、歌川国芳が好んで描いたにゃんこの中にもでてきそうな猫ではありませんか。

ナビ派の絵は実際、とても目に優しい作品が多かったです。
ふわっとした色彩で、静かな日常を優しい目線で描きとる。ときどきそこに夢も交じって、ホッとする絵が多い。
私が特に印象深く、そして好ましく思ったのは、モーリス・ドニの「鳩のいる屏風」でした。
ドニが、恋人マルトと婚約したことへの喜びを一双の屏風に白と青のパステルで描き出した、天国のような屏風。
光る白が優しく、青はどこまでも澄んでいて、白いドレスに身を包んだ後姿の女性が、誰かの名前(もちろん、ドニの名前です)を木の枝に刻んでいる、そんな優しい絵。
ナビ派は「絵画も室内装飾のひとつである」という考え方を持っていたそうで、確かにその場になじむように主張の強い題材や色合いはあまり使われないのですが、でもよくよく見てみると、あちこちに程よく品よく(この「品のよさ」というのも、ナビ派の特徴の一つのように思われました)イコンがちりばめられ、静かなメッセージをまとわせています。本当にかわいくてきれい。

一緒に見て回った友人と、なんとはなしに、
「ああ、いいねぇ…」
とささやきあう…ナビ派なんてよく知らなかったけれど、見て回るととても心が穏やかになり、自然と微笑みが浮かぶような作品群の展覧会でした。
三菱一号館美術館の佇まいにとても似合う気もします。

玄人筋の方でないと知らないような、これ、という目玉になるような有名な作品がなかったせいでしょうか、館内は人も多すぎず、少なすぎず。
小さなささやきが時折聞こえてくる穏やかな空間で、確かに室内装飾としての絵画の役割を、ナビ派の作品は果たしているのだなぁ、と思いました。

こういう風なくくりで企画される展覧会は、たぶんなかなかないと思います。
心穏やかに過ごせるひと時を必ず約束してくれる、そんな企画展でした。

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2017年03月24日

大エルミタージュ展を見てきました、の巻

■見に行った順番はかなり違ってしまいますが、まずは大エルミタージュ展から。

「大エルミタージュ展」は六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されています。
現在同じ六本木地区にある国立新美術館で「ミュシャ展」と「草間彌生展」が行われていることもあり、若干地味な印象を受けます。
ちょっと話がずれますが、現在六本木地区には大きなところで、国立新美術館、サントリー美術館、そして森美術館と森アーツセンターギャラリーがあります。
六本木といえば一大歓楽街、遊興地区、といったイメージがあるかと思いますが、元々は大名屋敷が数多く占め、また戦前は陸軍、戦後は自衛隊の基地があった場所。それが一度「危ない風俗の街」になり、今また文化の街へと変わろうとしている…というとてもユニークな土地の歴史があります。

その「文化芸術の街」への大変革の第一歩が、この「森美術館」「森アーツセンターギャラリー」だったと思います。

実際、森美術館・森アーツセンターギャラリーの展覧会は非常に挑戦的かつ前衛的な企画が多く、学芸員の方たちの個性や努力がとても伝わってきて、いつもとても満足して美術館を後にしています。
今回のような大物の企画展はもちろんのこと、ちょっとした地味目の企画展であっても、時間の許す限り見に行こうと努めています。
もし東京に来て、時間が余るようなことがあれば、六本木地区の美術館の存在をちらっと頭の片隅に置いておくと、ちょっとお得かなと思います。お勧めです。

■さて、話を戻して「大エルミタージュ展」。
今回の目玉はクラーナハの「聖母子像」。うーん、今年は日本でクラーナハを大量に見てるな。いい時代になりました。
エルミタージュは、ご存知の通りロシア帝国ロマノフ王朝の冬の離宮でした。
そこにドイツ出身の女帝・エカテリーナ2世がドイツの美術品を収集し始めたのが、「エルミタージュ美術館」の元になったのだそう。
今回の展覧会の一番最初の絵画が、エカテリーナ2世の大きな肖像画だったのは、なかなかに心憎い演出。
エカテリーナ2世というと、旦那である皇帝に対してクーデターを起こした豪傑、というイメージがあったのですが、この肖像画のエカテリーナ2世は実に慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、優し気に描かれていました。
この方のバックグラウンドのあれやこれやを見ると、だいぶこの微笑みに対して「えええ…?」という疑念を抱いてしまうのですが、うん、まあ、人にはいろんな側面があるからね…きっとこういう優しそうな気質もあったんだろう…少なくとも、冷酷な人ではない、むしろ情に厚い人だったのかもしれませんね。

ロシアというと、未だ旅行するのにビザが必要で、あらかじめ旅程も提出しなければならない、など、あまり気軽に行ける国ではない、というイメージがあります。
最近、安倍首相とプーチン大統領が会談し、まずは経済協力から始めましょうか、なんて話になっているので、近いうちにビザなしで観光旅行ができるようになるといいなぁ、そうなったら行きたいなぁ、というくらいの気持ちの距離があります。
なので、しばらく旅行でロシアにはいく予定はない感じ。
だからこのように美術品・芸術品の方からこちらに来てくれるのは、またとないチャンスです。

特に今回は私が好きな時代…ルネサンスからロマン主義くらいの作品が多く展示されているとのことで、これは見に行かねば!と思っていた企画展でした(ちなみに今回の作品群は「オールドマスター」という年代的なくくりでまとめられていました。オールドマスターという言葉があるんですね。知らなかったです)。

その「オールドマスター」の得意分野といえばなんといっても宗教画。
今回もバトーニの美しい「聖家族」や、レンブラントの「運命を悟るハマン」(これは演劇を見るような絵画でした! 聖書の場面をこういう風に切り取るのか〜とかなり感動しました。ちょっと日本の漫画(劇画)っぽい感情表現がされています)など、「おお〜やっぱり宗教画面白いな〜」と見入る作品多数。
他にも、静物画や風景画のえりすぐりの作品が数多く来日していました。

さて、今回の目玉作品は、先に書いた通りクラーナハの「聖母子像」。クラーナハらしい、蠱惑的だけれどひんやりとした印象の、緻密な作品でなるほどこの完成度は目玉になるにふさわしい。
けれど私が一番心惹かれた作品は、スルバランの「聖母マリアの少女時代」という作品でした。

聖母マリアは修道院で少女時代を過ごし、その間裁縫をずっと学んでいた、という伝説があるそうで、この作品はその伝説を描き起こしたものでした。
赤いシンプルなワンピース(ほとんど貫頭衣といってもいいほどのシンプルな装いです)を着たおかっぱ頭のあどけない少女が椅子に座り、膝の上に作業途中の繕い物を置きながら、ふっと天井に目線を上げてひっそりと祈っている…そんな絵です。
今回の音声ガイドは今や作家としての知名度のほうが高いんじゃないかと思われる又吉直樹さんが担当していましたが、このガイドの中で又吉さんが語っていた通り、モデルの少女に対するしみじみとした愛情がにじみ出ている作品でした。
それもそのはずで、「聖母マリアの少女時代」のモデルはスルバランの娘だったのだとか。
愛しい娘の素朴さと清潔感、そしてそこから垣間見える日常の中にある高貴さを、深い愛情と洞察力を以て描いた、胸をぎゅっとつかまれるような作品でした。
もしかしたら、この作品を見られたことが、この企画展の最大の収穫だったかもしれません。
そのくらい美しく、でも決して「大作」とは呼ばれないだろう、「こっそりと胸の中に収めておきたい」密度の高い作品でした。絵画を見て、こんなにほのぼのと深い愛情に感動を覚えたのは、久々かもしれません。「久々」の前回がどのくらい前でどの作品だったかも思い出せないくらいに「久々」。
この「聖母マリアの少女時代」はできるだけ多くの方に見てほしいなぁ、と願ってやみません。

「大エルミタージュ展」というのは、ちょっと大仰に過ぎるかなぁ、と見終わってから思わないでもありません。
なぜなら、一つ一つの作品は「大作」というより「深みのある」作品だったから。
ただ、「深い」を表す的確な言葉が見つからないのであれば、「大エルミタージュ」と冠するのも仕方がないのかなぁ…なんてことを考えました。
「深エルミタージュ展」じゃ意味が通じないですものねぇ。
でも「大」というよりは「深」エルミタージュだと感じたのですよ。

その「深さ」は是非直接ご覧いただきたいと思います。
「大エルミタージュ展」には、滋味深い作品がたくさん集められた企画展でした。

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2017年01月29日

赤坂迎賓館見学記 その2、の巻

■本館内部は撮影禁止なので、誠に地味な更新内容になってしまうのですが…(笑)

■赤坂迎賓館を見に行きたい!と思ったのは、勉強中の西洋家具の歴史講座で、この迎賓館の話を聞いていたからでした。
特に、この迎賓館の建築過程が面白くて。

この迎賓館、もとは明治天皇の東宮であった、後の大正天皇の「東宮御所」として建設計画ができたものでした。
設計の中心は、片山東熊。ジョサイア・コンドルの西洋建築学講座第一期生でした。

そもそもこのコンドルさん、明治政府に招喚されたときはなんと24歳だったそうです。
で、その下で学んだ片山さんも、辰野金吾さんも、大体コンドルさんと同年代。片山さんは22歳でした。
この、年齢層が面白いではないですか。ほぼ、学生が学生を教えているのも同然。実際、コンドルさんは日本に来るまで「設計」はしていても、建物を実際に建てたことはなかったんだとか。
明治政府も、本当はもう少し経験のある設計者を召喚したかったようなのですが、なにせそこは200年の長きにわたり鎖国をしていた国です。英国から見てみれば、「正体不明の国」ですよね。
なので、ベテラン格の設計者は招喚できず、その弟子筋に当たる弱冠24歳のコンドルさんに白羽の矢が当たったというわけです。

オリエント、日本に興味があり、知らない世界に飛び込んでいける勇気を持っていたのは、若さゆえだったのだと思います。
そして、そんな「若先生」から右も左もわからぬ西洋建築なるものを学ぼうとした日本の青年たちもまた、若さゆえの無鉄砲。

そんな「黎明期の西洋建築学教室」の様子を思い浮かべるだけで、ワクワクとしてしまうのです。

■さて、話戻って片山さん。この方はコンドル先生の教え子の中でも1、2を争うほど優秀な方だったそうです。
従って、大学卒業後も政府の重要な建物の設計を任せられていきます。
その集大成が、この「東宮御所」だった…はずでした。
技術の粋、美意識の粋を集め、海外諸国にも恥じぬ素晴らしい建物を…!
そういう気合と自負が、片山さんの中には満ち溢れていたはずです。
実際、その「お城」は素晴らしかったです。
まず、正面玄関から、最も格式の高い「朝日の間」に至る回廊と階段のぜいたくさ!
フランス産やイタリア産の立派な大理石がどーんと並び立ち、一瞬日本にいることを忘れそうな豪勢さ。

イタリアからフランス、イギリスと北上しながら建物を見ていくと、大理石の「色」がだんだんなくなっていくことに気が付きます。
最も贅沢に色付き大理石を使っていたのは、フィレンツェのメディチ家の「リッカルディ宮」。
それとは対照に真っ白な大理石で作られていたのは、ロンドンの大英博物館、でしょうか。
赤坂離宮はそのちょうど間、フランス…特にヴェルサイユ宮殿のようなイメージです。
実際に、ルイ16世様式(マリー・アントワネットの生きた時代)を基にしたデザインが多いので、あのイメージで間違いないのでしょう。
紫色、ピンク色の模様の入った綺麗な大理石の柱がコリント様式にしつらえられ、でーんと並ぶ回廊のゴージャスさや華麗さは、「日本の建築、頑張りました!!」という誇らしさに満ちています。

続く朝日の間には、おそらく天照大神をイメージした…のであろう、「曙の女神」の天井画がどーん。
絨毯は高貴な色とされる紫のグラデーションに桜の模様がちりばめられ、「曙の女神」の天井画に描かれた桜の枝からハラハラと絨毯に桜の花びらが舞い落ちている風景を描いています。
おりあげ天井部分には、皇室から下賜される五七の桐文様が描かれ、東西南北のそれぞれの壁上部には、陸軍を表すライオンと、海軍を表す舳先が描かれています。
これでもか! の連続攻撃です(笑)
イコノロジーとかに詳しい(多分、西欧からやってくるお客様たちは、教養レベルで共有できる知識、ではあるのですが)方々が見たら、「おお! やるな、日本!」と一目置くに違いないつくり。

舞踏会が行われることを想定した「羽衣の間」、謁見の間として使われる「彩鸞の間」(鸞は、鳳凰のようなイメージで、国が豊かな時に現れる吉鳥なのだそうです)も、「正しくゴージャスな西欧の宮殿」でした。

各部屋にボランティアのガイドさんがいらっしゃって、それぞれが工夫を凝らした案内をしてくださるので、どんどん質問するといいと思います。
私たちも、ガイドさんにいろんなことを聞きまくりました(笑)

■さて。
このように贅をつくし、国威をかけて建設された東宮御所ですが。
実際には東宮御所としてはあまり使われなかったそうです。
というか、ほぼ「東宮御所」としては使われなかった…というべきか。

なぜならば。
片山さん、「立派な東宮御所ができました!!」と当時の明治帝にご報告したところ…明治帝のご不興を買ってしまったのだそうです。
「贅沢すぎる」
…ああ、明治帝は質実剛健を旨とした方だったのでした…(涙)
この一言により、東宮御所は東宮御所として使われることがなくなり…この時の片山さんの脱力感を想像すると、言葉になりません…
「えええええ!?
って感じだったんじゃないかなぁ…

そんな「結局東宮御所としては使われなかったんですよ」というオチを知ってから、赤坂迎賓館を見るのは、なかなかに感慨深かったです。
みんな頑張った。
技術と美意識の粋が集められていた。
当時としては最高の宮殿だった。
でも…天皇陛下の意にはそぐわなかった…

なんでしょう、この一気に現実に引き戻される(むしろ悪夢に近い)感覚は。
足元からくずおれるような、脱力感。

そういうことを思いながら各お部屋を回っていると、「夢」とか「幻」とか、そういう言葉が何度か脳裏をよぎりました。

とはいえ、この宮殿は「迎賓館」と使用目的が変わって使われたのは間違いないし、これだけの建物が建てられ、そして維持されているということは、日本の誇りであることには変わりありません。

ただこの、明治帝の「贅沢すぎる」というお言葉と、「聞いてないよ!!!」という建設にかかわった人々の心の声(たぶん、そう思った人はいたと思う)が思い出されるにつけ、無常感を覚えずにはいられないのです。

■というわけで、ちょっと普通の「見学記」では違っていると思いますが、明治時代の人々の様々な「意気」に思いを寄せ(…多分、想像力過多というか、ほぼ妄想に近いのだと思いますが…)、大変楽しく見学しました。
先にも書きました通り、朝日の間は天井画の修復に入るそうなので、2017年2月下旬までにご覧になることをお勧めします!

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2017年01月24日

赤坂迎賓館見学記 その1、の巻

20170123東京迎賓館2.jpg

というわけで、赤坂にある迎賓館を見に行ってきました!
ずっと行きたかったのですが、予約が必要とか、当日券も並ぶ、とかいろいろ聞いていたので足が遠のいておりまして…率直に言えば、タイミングが合わなかったのです。
でも今月いっぱいは予約なく見られると知って、早速行ってきました。

面白かったし楽しかった〜!!!

詳しい解説書と写真集を買ってきて、現在熟読中です。
なので、詳しい感想などはまた後日。

ところで、赤坂迎賓館の中で最も格式の高い「朝日の間」は、来月下旬から改修工事になるそうで、2年くらい見られなくなるんじゃないか、とボランティアの方がおっしゃっていました
気になる方は、2月中にいらっしゃることをお勧めします♪

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