2017年05月15日

「絵巻マニア列伝」展に行ってきました、の巻

■これ、「六本木開館10周年記念展」という冠がついていました。
え? 六本木ミッドタウンができてもう10年経つの?という驚きが先に立ちました。
時のたつのは本当に早いと、最近実感させられることが多いです。

■4月は体調不良でとにかく「人ごみになるべく出ないで寝ている」ことを優先していたので、あっという間にこの展覧会の会期期間が終わってしまいました。
絵巻はあんまり長期間展示できないですものね。仕方がない。
で、どん詰まりの最終日に行ってきました!
最終日でもっと混んでるかと思ったのですが、予想に反してそうでもなく…もちろん、絵巻は棚に置く以外の展示方法(壁掛け等ほかの展示手法)ができないため、どうしても人気のある絵巻では行列ができてしまうのですが、それでもストレスになるほどの行列はなかったので、やはりあまり混んでなかった、というべきなのでしょうか。

20170514サントリー美術館絵巻マニア列伝.jpg

右から左へと時間が流れている絵巻は、一度見慣れるとマンガを読むような感覚になるのが大変面白かったです。むしろ、右、左、斜めと視線移動の「クセ」になれる必要がある現代の漫画の方が、より複雑かも。
今回は皇族や貴族が収集し、天皇(上皇)のお墨付きまでがセットになっている絵巻が多かったので、印象に残るほど鮮やかなものは、有名な寺社仏閣の縁起絵巻に集中していたような気がします。
これらの中でも印象的だった縁起絵巻は「石山寺縁起絵巻」。
鎌倉時代にオリジナルが作られた後、室町時代にも写しが作られ、さらに江戸時代に下って松平定信(この方も「絵巻マニア」の一人に列せられていました)の助力を受けつつ谷文晁も写しを制作していた、という時代ごと(でも描いている場面は全てオリジナルに準拠しています…「写し」=コピー本なので)の絵巻がありました。
「あ、これさっきもあった!」
ととっさに思い出させたのは、展示の構成の妙だったのでしょう。

さて、お寺や神社の縁起絵巻以外といいますと、物語系の絵巻がやっぱり楽しかった!
特に人気があったのは「放屁合戦絵巻」だったようで、これとこれに連なる絵巻は、整列鑑賞するように美術館の方が列の整理をしていらっしゃいました。

まず前段として「福富草紙」というものがありました。
これは高向秀武という人が夢のお告げで「すばらしいおなら」を出す芸…要するに「放屁芸」を体得し、貧しい生活から脱して時の中将にもそのおならを披露するほどの立場とお金を手に入れることができました、というお話。
おなら!!!
すばらしいおなら!!!
なんというパワーワード!!!(笑)
このお話は当時の人たちの心に深く刻まれたらしく…なんとこれを受けての絵巻ができます。

それこそが、「放屁合戦絵巻」。

もう、タイトルの通りです。
音の大きさはもちろん、臭さとか、量とか(だって複数人が一つの大きな袋におならを貯めてる絵があったりするんだもん(笑))、パワーとか、多分長さや音階?などにこだわったおならを、様々な人たちが発している場面が延々と描かれている、そういう絵巻です。小学生男子かよ(笑)
しかし、創意工夫を凝らした「おなら」芸合戦にも、ラスボスが登場します。

それがなんと、「福富草紙」で描かれた秀武さんの娘だと名乗る、「尼公」なのです!
まさかの女性!
しかも「放屁の名家」の末裔!!
その尼様ってば、絵巻の最後に…おしり丸出しにして「すばらしいおなら」を発している姿が描かれているのです。

これだけでも抱腹絶倒の「放屁合戦絵巻」ですが、後祟光院の奥書がついているところが、またニヤリとしてしまうのです。まさに「極め付け」。親王様ってばおならの話に奥書書いちゃってる!(笑)

展覧会のタイトルが「マニア列伝」ですから、この後祟光院は間違いなくマニアの一人。
その息子である後花園院もその血を継いで絵巻マニアだったそうで、音声ガイダンスによれば、父・後祟光院と息子・後花園院の間で絵巻の貸し借りがあったらしく、父子で絵巻をみながらキャッキャしていたのかと思うと、「人間関係」に心惹かれてたまらない私としては、妄想たくましくして楽しくなってしまうのでした(笑)

他にもBL絵巻…じゃなかった、稚児絵巻「芦引絵」(ここは特に整列鑑賞でもなかったんですが、なんだか山のような人だかりで、ちゃんと見られなかった…ちょっと残念)があったり、人間が死んでからどのように肉体が変化していくかを活写した「九相図」(これは腐っている様はちょっとグロテスク)とか、見ているだけで色々な想像や妄想がたくましくなってしまう、大変脳に刺激のある展覧会でした。

絵巻って面白い。
マニアになる気持ちもちょっと…いや、かなり判る(笑)
音声ガイダンスが、
「今日また一人の絵巻マニアが誕生したら嬉しく思います」
といった言葉で締めくくられていたのですが、マニアになるかはわからないけれど、これから絵巻の世界の扉を開けてみよう、と思う人間がここに一人誕生しましたよ!

浮世絵もそうなのですが、絵巻は一つの絵に込められた情報量が半端なく多いので、もっとじっくり鑑賞したかったな。
いやあ、いいものを見ましたよ。

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posted by Lilalicht_8 at 20:46 | Comment(0) | 展覧会

2017年05月14日

今日はひと休み…の巻

■サントリー美術館の「絵巻マニア列伝」に行ってきました!
今日が最終日だったので飛び込みギリギリセーフ!
とても楽しかったし、いろんな妄想が湧いたので、明日改めてゆっくり書きたいと思います( ´ ▽ ` )ノ

とりあえず…絵巻物って面白い!


posted by Lilalicht_8 at 19:31 | Comment(0) | 雑感

2017年05月13日

シド武道館2days「夜更けと雨と」「夜明けと君と」に行ってきました、の巻

■タイトルに「雨」なんて入れるからだよ(笑)…と笑っちゃうくらい、本日の東京は20日ぶりに降ったまとまった雨に濡れていました。
20170513sid.jpg

シド単独のライブって、1年7カ月ぶりなんですって。
そしてアルバムは、3年8か月ぶりに今年の秋に出るんですって。

通りで最近、「シド」って文字を打ってないはずだよなぁ…って思いました。
新曲が出てもプロモーションがほとんどないし(Mステとか、どんだけ出てないっけ?)
ライブもないし。
いやそれ以前に、シングルそのものがなかなかでない!

待ってたし、すごくもやもやしてました。
なんでこんなに「何もない」のかな、って。
多分その理由は今後も一切出てくることはないでしょうし、出てきたとしても「大人の事情」という便利な一言で済まされてしまいそうで、考えることもうっとうしい。

そういう感情を「鬱憤」と呼んでいいのなら、それらを吹き飛ばすにふさわしい、「爆発」を感じる武道館2daysライブでした。

セットリストは、多分公式にUPされるだろうと思うので(前だったらちゃんとメモして書いてたんですが、今回は体調が悪かったのと…なんだろう、「様子見」という気分がすごく前に出ていたのです)詳細はゆだねることにして。

衣装が黒で統一された1日目「夜更けと雨と」は、その衣装のイメージに合った、ちょっとダークで毒があり、さらにマニアックさも兼ね合わせたラインナップでした。
かつて「歌うことによって、曲が進化する・曲が化けることがあるんだ」と衝撃を受けた「Sleep」(今読み返したら、この記事、2011年でした! もう6年も前か…時がたつのは本当に早い…)に似たような進化を見せたのが、1日目の「花びら」でした。久々に、マオくんの歌声(そして演奏)に心を根っこから持っていかれるような感覚がしました。
歌声に巻き込まれて、頭の中が真っ白になる瞬間。
それをまた、シドからもらえたことに、心から感謝します。

一方、衣装が白で統一された「夜明けと君と」。メジャー感のある曲目が並び、セットリストとしては私はこちらの方が好きでした。
圧巻だったのはやはり…大ラスの「hikari」でしょうか。
「hikari tour」のファイナルで(え、これ2009年だったよ!!びっくりだよ!(笑))、声がかすかすになり、泣きながら歌っていたマオくんのことを思い出しました。
思えばあの時の悔しさから、マオくんはストイックにボイトレを始めたのでした。
そこからどんどん、どんどん、歌声は進化し続け…どこまでいくのかしらと楽しみと心配が半ばする頃に、色々な病気や現象が彼とシドに襲い掛かり。
長い凪の時間が、今日終わった、と考えてもいいのでしょうか?
キラキラとした粒子が見えるようなまぶしい空間が現れ、歌と共に収束していったあと、座り込み、珍しく泣いていたShinjiくんをみて、胃がググッと締め付けられるような痛みを覚えました。
この「凪」の間、何があったんだろう。何と戦っていたのだろう。どんな思いをしていたのだろう。
私はこの「凪」を、かなりドン引きして眺めていたので(何が理由かわからないまま、アルバムはおろかシングル発売もままならない状況というのは…彼ら本人たちだけのせいとは思えなかったので、努力が報われない「組織」っていったい何なんだろう?くらいのゲスの勘繰りはしていました、はい(笑))、飄々とした印象の強いShinjiくんの涙の語る意味について、あれこれ考えてしまったのです。

秋のホールツアーが発表されたので(ホールやアリーナくらいがやっぱり見るにはらくちんでいいです(笑))、このままシドの活動が軌道に再度乗るといいなぁ…と願いつつ。
やはり彼らの作るメロディとマオくんの歌詞の世界は絶品だな、と噛みしめつつ。

「hikari」に込められたみんなの想いがきれいに昇華されるといいなぁ。
そう、素直に思える、いいライブでした。

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posted by Lilalicht_8 at 22:58 | Comment(0) | シド

2017年05月12日

今月のネイル

今日があまりに暑かったので、今月のネイルはかなり夏を意識した涼しげなものになりました。

20170512今月のネイル.jpg

夏になると、なんでターコイズ使いたくなるんでしょうね(笑)

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posted by Lilalicht_8 at 12:37 | Comment(0) | 今月のネイル

2017年05月11日

「ゴールドマン・コレクション これぞ暁斎」展に行ってきました、の巻

■今回のこの「ゴールドマン・コレクション」による河鍋暁斎展、私は4月に渋谷文化村ミュージアムで見ましたが、現在巡回展示が高知に行っているようです。
その後、京都と石川に行くようなので、早めにおすすめ記事を書いておこうと思います。

■私は、河鍋暁斎という江戸末期から明治にかけての画家に、とても興味を持っています。
興味を持ってまだ日が浅いので、先達の皆様に突っ込まれると「ひゃーっごめんなさい、ごめんなさい!」と頭を隠して逃げたくなってしまうのですが、恐る恐るその世界に踏み入っている感じです。

河鍋暁斎の何に興味を持ったか。

1つ目は勿論、圧倒的な画力。今回の展覧会を見にいった友人が、「河鍋暁斎って天才だったんだねぇ」としみじみ言った通り、特に今回のように肉筆画が多い展覧会だと、その圧倒的な筆力にひれ伏すしかありません。この勢いと破天荒さ、そこに通底する「確かさ」と「几帳面さ」にただただ恐れおののき、溜息をついて展覧会を回っていました。

2つ目は、彼を取り巻く人間関係の面白さです。
歌川国芳の弟子(弟子だった期間は本当に短いけれど、画風の基礎はここにあると思います)であり、ジョサイア・コンドルを弟子にしていた人。
もう、これだけで面白すぎます。
以前、赤坂迎賓館見学台湾旅行の記事でジョサイア・コンドルとその教え子たちについて触れましたが、私は、
「弱冠24歳の英国人建築家(それまで設計図は書いたことがあっても、実際に建物を建てた経験は無し)と、ほぼ同い年くらいの西洋建築を志す日本の若き技師たち」
という「黎明期の西洋建築学教室」の様子を想像するだけで楽しくなってしまうのです。や、妄想なんですけどね(笑)
そんな、「ジョサイア・コンドルを取り巻く人間関係」の中で、間違いなく輝く一等星なのが、コンドルが敬愛してやまなかった河鍋暁斎でした。

そんな「一等星・河鍋暁斎」の海外流出した作品が、ゴールドマンさんという方の一大コレクションとして日本に里帰りした展覧会、それが今回の「これぞ暁斎」展でした。
つまり、日本国内には通常ない作品ばかりなわけで、これは見に行かないわけにはいきません。

20170511河鍋暁斎展.jpg

■今回の展覧会の図録の冒頭に、暁斎コレクター・ゴールドマンさんが言葉を寄せていらっしゃいます。
なぜ暁斎を集めるのか?と問われて答えたのが、
「暁斎は楽しいからですよ!」
ああ、わかるわかる! そう、楽しいんですよね。
画題も様々だし、技法も様々。迫力がある仏画や、愛嬌のある動物の戯画。
特に今回の大目玉作品は、「百鬼夜行図屏風」で、これは是非実物を見ていただきたい。
付喪神たちが暗い夜道を楽し気に、きゃっきゃと声を上げながら練り歩く様子が、実に生き生きとユーモアたっぷりに描かれています。
これに付随して、河鍋暁斎美術館主催で、作家・京極夏彦さんが講演会をなさったんですよね。聞きに行きたかったけど、まだ大丈夫と思ってるうちに、満席になっていた…残念。
眼光鋭いカラスの絵の数々。
以前、三菱一号館美術館で行われた「画鬼・暁斎」展では長蛇の列になっちゃっていてみるのをあきらめた、春画のスペースもたっぷりとられていました。

そして、最後の仏画のコーナーに来て、非常に目を引かれる「達磨半身図」がありました。
今回もイヤホンガイドを借りていたのですが、そのイヤホンガイドでも当然取り上げられていた、その達磨図。
それこそが、ゴールドマンさんが暁斎コレクションを始めるきっかけになった、コレクションの中でも重要な位置を占める絵であり…元はジョサイア・コンドルの収蔵品だったそうです。
ああ、ここでやっぱりコンデール君(暁斎絵日記には「コンデール君」が頻出するので(笑))が絡んでくるんだなぁ…師匠の一級品はコンデール君が持ってたんだなぁ。
「人間関係好き」の私にとっては最上のオチがついて、展覧会を見終えたのでした。

■さて、ここからはちょっとしたおまけです。
「これぞ暁斎」展を見終えて勢いづいた私は、埼玉県蕨市にある「河鍋暁斎記念美術館」に行くことにしました。
ただ、最寄り駅が西川口駅で…うーん、ちょっと一人で行くには腰が重い。
というわけで、付き合ってくれる友人二人(うち一人は男性)と一緒に行ってきました。
うん、複数人数…特に男性が一緒に行ってくれてよかったかな。
西川口駅周辺は、なかなか私の日常の中にはない世界で、正直ぎょっとしました。駅前をちょっと越えれば、いたって普通の住宅街なんですけど、そこに到達するまでに右往左往してしまう感じ。
そんな住宅街の中に、河鍋暁斎記念美術館はありました。
小さな美術館でしたが、とてものんびりした空気が漂い、収蔵品もいいものがあるなあ、という印象。
なにより美術館の方たちがとても親切で、色々と質問してしまう私たちに大変良くしてくださいました。
一人で行くのは気が引けるけど…でももう一回くらい、ゆっくり見に行きたいです。

■というわけで、「これぞ暁斎」展はゴールドマンさんのご挨拶と、最後のオチ(個人的に「オチ」と判断しました(笑))がとてもツボにはまり、かつとてもいい内容の展覧会でしたので、興味のある方はぜひどうぞ♪

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posted by Lilalicht_8 at 15:50 | Comment(0) | 展覧会

2017年05月10日

映画「3月のライオン 前・後編」を見てきました&お返事集

■相変わらずのろのろとした更新ですが、懲りずにお付き合いいただければ幸いです。
で、「2週間に一度の風邪ひき」は相変わらずで…また寝込んでました。面目ない。
主治医の先生も手慣れたもんで、脈をとって(漢方医でもあるので)、
「うん、抗生剤の点滴だね」
とさばっと一言。
顔見知りの看護師さんも、
「続くねぇ。たぶん、そういう時なんだよ。仕方ない。自分のせいじゃないからね」
と言ってくれて、ちょっとほろっとしたり。
ところで、点滴が終わって処方箋を出されたのですが、その一つに漢方薬としては有名な「葛根湯」がありました。なんてったってツムラの漢方で「1」番ですからね。知らない人はまずいない、大変ポピュラーな漢方薬です。
一応、「朝晩1包ずつ」と出されたのですが、先生曰く、
「葛根湯飲んで1時間たっても汗かかなかったら、汗かくまで1時間ごとに飲んでね」
とのこと。へ? 葛根湯ってそういうものなの?
「そうだよ! 汗かくために飲むんだからね!」
お歳もすでにわからないくらいいつまでも若くてはつらつとした先生が、元気いっぱい教えてくださったので、その通りにしてみました。
まず1包…1時間たっても汗かかず。続けて…というわけで、2時間で3包飲んだところいつしか眠くなり…目が覚めたらどっさり汗をかいていて、すっかり熱が下がっていました。うーん、すごいな。
あくまで私は先生の指示の元、こういう葛根湯の飲み方をしたのですが、これって結構一般的みたいですね。
熱が出たときは「こういう葛根湯の使い方もあるんだ」と頭の片隅に置いておくといいかも。
勿論、お医者さんの指導を受けてくださいね。

■さてさて、どうにも前置きが長くなる癖があるようですが、いよいよ本件、映画「3月のライオン」前・後編について。
前編は、公開されてすぐに見に行ったので、もうすでに1カ月半が経過しています。
後編も、GW前に見に行きました。
本当は、後編を見る前にもう一度前編を見に行きたかったのですが、ちょっとチャンスがなかった。

前編を見て一番印象に残ったのは、有村架純ちゃん演じる香子さんの存在感でした。
原作の漫画とアニメを見ていると、どうしても川村家3姉妹のほうに重点を置かれていて、原作11巻現在、なんとなく「幸田家問題」が置き去りにされています。というか、多分今後の展開ではきっちり決着がつくんだろうけど、今のところはそこに至ってない存在。
映画の方は、どうやらこの香子さんをヒロイン的ポジションに持ってきているようでした。
だから多分、原作やアニメを先に目にしている人たちにとっては違和感があるんだと思う。
前編はとても丁寧に原作をなぞっていて、それぞれのキャラクターを演者さんたちがたいそう的確に描いているように思いました。
「あ、原作まんまだな」
というかんじ。もちろん、時間の制約があるのでキャラが整理されていたり、違う位置づけになっていたり…というのはありましたが、それも許容範囲かな。逆にそこまできっちり原作通りに映像化してしまうと、かえって映画を作る意味がないように感じました。

で、改めて前編を振り返ると、香子さんとの関りを通じて、零くんが如何に「生きづらさ」を抱えて生きてきたかがうかがえるようになっていて…良くも悪くもそこで終了。
こりゃ、後編を見るまで感想はお預けだなぁ…というのが、「前編を見た感想」でした。
ちなみに前編の最後が新人王をとるところだった(アニメ版では到達してないところですね)ため、かなり今のところある原作を消化しちゃってるなぁ、これ、どうやって後編作るんだろう?と危ぶんだ…ところまで含めて、前編の感想。

さて、ここからはたぶんネタバレを含むので、原作・アニメ・映画後編未見の方はご注意ください。
201705103月のライオン.jpg
劇場でポストカードをいただきましたよ。

ここから次の矢印まで、ネタバレ注意です。



Twitterでの情報などで、後編は「当初原作が辿る予定とされていた内容」がたたき台になっているらしい、ということは知っていました。
そのことを踏まえても、随分オリジナルな内容が含まれていたと思います。
ひなちゃんのいじめの事とか、川村家三姉妹の父・妻子捨男(仮)のあらましはなぞるし、宗谷名人との記念対局など、原作をなぞるところは多かったのですが、相対的にそれらのストーリーの印象がかなり薄い。いや、ひなちゃんのいじめのくだりはちょっと見ていて辛いので、これくらいのあっさりした感じでよかったんですけど。
なぜ原作通りのストーリーの印象が薄いかといえば、それは後編が、
「幸田家と零との間の物語に決着がついた」
ところを見せてくれたからでした。
こちらのストーリーの方が圧倒的に印象に残りました。
そして、私はこの決着を大変好ましく思い、前編後編を通じて映画版の「3月のライオン」はいいな、という感想を得ることになりました。

特に、零という強烈な嵐によって崩壊したかのように見えた「幸田家」の土台が、実はしっかり残っていて、きちんと再生したところまで描いてみせたのが、私個人にとってはスッキリしました。
幸田のお父さん(豊川悦司さんがすごくきちんと「お父さん」で、もうそこはブラボーの嵐です)は言葉は少ないけれど、香子さんも歩くんもそれぞれをきちんと成長を見ていて、自分の家庭を決して「将棋で呪われた一家」にしてはいなかったことがわかるシーンは非常に腑に落ち、なんというか…こういう展開なら、「カッコウのような自分」という零くんが自分の重荷にしてきたものを一つ、取り除いてくれたようで、胸がすく思いがしました。
そうか、このポイントがまだ原作ではきれいに精算できていなかったんだなぁ、と改めて頭がすっきりした、というか。

それの対価として、私が原作で大好きな、「お母さん以外誰もいない時に幸田家を訪ねてくる零くんの話」がなかったことになりましたが、そこは仕方がない(たぶん、そこが許せない原作ファンはいるんだろうなぁとぼんやり推測はしました)。
それを引き換えにしても、原作にはまだない、
「幸田家と零くんの再生の物語」
を描くのは、とても大切なパーツだと思いました。




ここまででネタバレ終了。

それにしても前編も後編も、よくキャスティングしましたよね。
みなさん「できるだけ原作に忠実に」と心がけているのが伝わってくる、丁寧な演技とキャラづくりでした。
豊川悦司さんの幸田のお父さん、伊藤英明さんの後藤さん、佐々木蔵之介さんの島田さんは特にナイス。
そして、「原作と違う!」と一番にバッシングに合いそうな立ち位置で割を食っちゃったなぁ…と気の毒に思いつつも、それでも「超ファインプレーだったよ!」と絶賛したい、有村架純ちゃん。
本当に皆さん素敵でした。
あ、伊勢谷友介さんの妻子捨男も!(笑)なんていうか…あの目の笑ってない笑顔を映像で見られるとは思いませんでしたよ、すごいな。

原作を読んでいない方でも、とても楽しめると思います。
むしろ、読んでない方の方が楽しめるんじゃないかなぁ。
私は、これは充分「アリ」だな、とおもいました。

■大変遅ればせながらお返事集
>みこさん
いつもいつもコメントくださるのに、お返事遅くなって申し訳ありません。
クラーナハ展、楽しまれたようで何よりです! 
ナビ派展、関西に巡回しないのは本当に残念です。これを機会に、ちょっとナビ派を掘ってみようかな、と思っています(笑)

>乃香さん
こちらもお返事遅くなり、申し訳ありませんでした。
映画「白雪ひめ殺人事件」をご覧になっていたんですね〜 あの映画の原作と今回の「愚行録」の原作は、文体等がとても似ていて既視感を覚えたのですが、正直に言うと…映画は「愚行録」の方が出来が良かったと思います。
あの映画が耐えられるなら、多分「愚行録」は大丈夫なので、機会があればぜひどうぞ。
映像がきれいな映画でした(撮影はポーランドの方でした。そのせいか、割とさっぱりして見えたのが返ってよかったのかもしれません)。

>ちょり
コメントありがとう!!
すぐにコメントくれたので、とてもうれしかったです。
叙述トリックということと、「読後感が嫌な感じを残す」という意味では、確かに安孫子武丸さんの「殺戮にいたる病」と似てるよね。ただ、原作の出来だけ比べると、私は圧倒的に「殺戮にいたる病」の方がよかったと思います(そこがね〜貫井さんの残念ポイントでもあるな、と密かに思ったり…)

「ザ・コンサルタント」、ぜひ見てください。これはお勧め。
あっという間に上映館が少なくなってとても残念な思いをしたけれど、これは日本での宣伝少なかったからなのかな。
なんでも続編も用意されているらしいので、アメリカではそれなりの評価を受けた映画だったのでしょう。
何より、ベン・アフレックの当たり役では?というくらい、ヒーローがはまっていたので。
もうすぐ公開されるベン・アフレック主演・監督・脚本の「夜に生きる」でも殺し屋?っぽい役をやるみたいなんだけれど、どうしても「ザ・コンサルタント」と比べてしまいそう(笑)

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posted by Lilalicht_8 at 21:17 | Comment(0) | 映画

2017年04月28日

三菱一号館美術館「オルセーのナビ派展」に行ってきました、の巻

■この展覧会も5月21日までらしいので、お出かけになる方はお早めに〜という気持ちも込めて、早めに記録しておきます。

■この展覧会、副題に「美の預言者たち〜ささやきとざわめき」とあります。
20170411ナビ派展.jpg

ナビ派、ってご存知でしたか?
不勉強をさらすようで恥ずかしいのですが、私は知りませんでした。
一緒に行った友人や、大学で美術史を修めた妹は知っているようでしたが、ポスターにもよくよく見ると、
「はじめまして、ナビ派です」
という文言が入っている。
「ナビ派」をまとめて企画展にするのも、どうやら日本で初めてらしい。なるほど。
んで、ナビ派って大体どういう人たちで、そもそも「ナビ」ってどういう意味なの?というところから、私は始まりまして。
ナビ派に属する人たちは、こんな人たちらしいです。

20170411ナビ派展2.jpg
あれ、よく見ると先駆者としてゴーガンがいたりする。
厳格には「ナビ派」ではないけれど、ナビ派の基礎的な考え方を示したのが、どうやらゴーガンらしいのです。
で、あと知ってるのは…ドニとかボナールとかは、知ってる。…でも、印象派に属する人たちだと思ってたよ。

…と、私が誤解していたのも当然で(←悪い開き直りの典型例です(笑))「ナビ派」というのはざっくりいうと、友達とその友達程度のごく少数(10人いないくらいの)が週末ごとに仲間の家に集まって芸術論をかわし(といっても雑談みたいなのが多めの、要するに「ちょっと上品な飲み会」みたいな感じだったらしい)、活動期間としては10年くらいで友好的に解散した…そしてここが「肝(キモ)」なんですが、

「お互いに『○○の預言者』『××の預言者』とあだ名をつけて呼び合っていた」

という…今でいうと、同人誌のサークルみたいな感じ?だったらしいのです。
え、もしかして「ナビ」って…「預言者」の事か!(笑)
わー中二病っぽいー(←名前を由来を知った瞬間の反応(笑))

実際「日本かぶれの預言者」とか「ズアーヴ兵の預言者」(本当に兵隊だったわけじゃなくて、髭を生やした風貌がそれっぽかったかららしい)とか、わー仲間内でわくわくしながら呼び合ってたんだろうなぁ、というほほえましい様子を妄想たくましくしてしまう、若手芸術家グループだったのだそうです。
(そして、そういう「仲間内できゃっきゃしている感じ」、嫌いじゃないです。むしろ基本的には大好物です(笑))

「ナビ派展を見てきたんだよ」
と妹にいったら、

「えー、いいな、ナビ派っていいよね。ほんわかしているし、色が優しいし、テーマになってるものも子供とか家の庭とか、あと猫多めの絵が多くて」

という答えが返ってきたのですが、もうこの妹の言葉こそ、百点満点の「ナビ派」だと思いました。
テーマが非常に身近で(隠れテーマとしてキリスト教の要素があるのは仕方がない。ヨーロッパはそのようにできてきたので)、パステルカラーが多用され、そして平面的でポップ。
「日本かぶれの預言者」(=ボナールの呼び名だそうです)がいることからもわかるとおり、「ナビ派」ができたころはパリ万博で浮世絵が紹介され(その前から、包み紙として浮世絵が使われていたりして、素地はあったようですが)、多くの画家が「ジャポニズム」に傾倒していたころでした。
言われてみれば、チケットに使われているボナールの「格子柄のブラウス」というタイトルの少女と猫の絵。
この白と黒のにゃんこは、歌川国芳が好んで描いたにゃんこの中にもでてきそうな猫ではありませんか。

ナビ派の絵は実際、とても目に優しい作品が多かったです。
ふわっとした色彩で、静かな日常を優しい目線で描きとる。ときどきそこに夢も交じって、ホッとする絵が多い。
私が特に印象深く、そして好ましく思ったのは、モーリス・ドニの「鳩のいる屏風」でした。
ドニが、恋人マルトと婚約したことへの喜びを一双の屏風に白と青のパステルで描き出した、天国のような屏風。
光る白が優しく、青はどこまでも澄んでいて、白いドレスに身を包んだ後姿の女性が、誰かの名前(もちろん、ドニの名前です)を木の枝に刻んでいる、そんな優しい絵。
ナビ派は「絵画も室内装飾のひとつである」という考え方を持っていたそうで、確かにその場になじむように主張の強い題材や色合いはあまり使われないのですが、でもよくよく見てみると、あちこちに程よく品よく(この「品のよさ」というのも、ナビ派の特徴の一つのように思われました)イコンがちりばめられ、静かなメッセージをまとわせています。本当にかわいくてきれい。

一緒に見て回った友人と、なんとはなしに、
「ああ、いいねぇ…」
とささやきあう…ナビ派なんてよく知らなかったけれど、見て回るととても心が穏やかになり、自然と微笑みが浮かぶような作品群の展覧会でした。
三菱一号館美術館の佇まいにとても似合う気もします。

玄人筋の方でないと知らないような、これ、という目玉になるような有名な作品がなかったせいでしょうか、館内は人も多すぎず、少なすぎず。
小さなささやきが時折聞こえてくる穏やかな空間で、確かに室内装飾としての絵画の役割を、ナビ派の作品は果たしているのだなぁ、と思いました。

こういう風なくくりで企画される展覧会は、たぶんなかなかないと思います。
心穏やかに過ごせるひと時を必ず約束してくれる、そんな企画展でした。

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2017年04月27日

「フェードル」を見てきました、の巻

■3月半ば以来、どうにもこうにも風邪が治りきらず、そればかりか4年ぶりに喘息の発作が起こるという体たらくで、いやはや今年の天候不順には大変痛い目にあわされました。三寒四温というにしても、「寒」と「温」の差が激しすぎるだろう!と。

■そんな合間合間を縫って、ぽつぽつと様々なものをご縁があって見に行ってまいりました。
で、順不同に、
「もうすぐ終わっちゃうけど、これは多くの人にぜひ見に行っていただきたい!!」
と切に願うものから(もう終わっちゃって少々悔しいものもあるのですが、巡回しているものもあるからまだ間に合うかな…)拙い感想などを記していきたいと思います。
というわけで、今回は「フェードル」から。
「フェードル」は現在渋谷の文化村コクーンシアターで上演されていますが、どうも4月30日までみたいです。
そのあと新潟、愛知、兵庫に回りますので、興味のある方はそちらでどうぞ。

■さて、今回はご縁あって「フェードル」の観劇チケットを入手することがかないました。
んーっと、具体的に言っちゃうと、とあるクリスマスパーティのビンゴで当たったのです。
なんでこんなことをわざわざ書いたかというと、私はいたってミーハーなたちで、綺麗なものは全て好き!という観点から、あさーくひろーく様々なものを見ております。が、人の好みというものは往々にして偏ってしまうもので…
つまりこの「フェードル」は、このような「偶然」がなければ、正直自分のアンテナには引っかからない系統の演劇だった、というわけです。
自分の間口は広くしておこうといつも心がけているのですが、この心がけはたいていいい方に転びます。
そしてこの「フェードル」は、心がけが大ヒットをかっ飛ばしたものでした。

■前置きが長くなりました。
「フェードル」の物語、これはギリシャ神話にその種を持つ舞台でした。
Twitterでアカウントをフォローしているギリシャ神話の現代の巫女(笑)・藤村シシンさんが偶然パンフレットにこの物語の下地になる神話を解説していらっしゃって、見終わってから「なるほど」と思ったのですが、そういう神話の下地を知らなくても、もちろん楽しめます。
現に私は大変楽しみました。
が、そういう「基礎知識」があれば、もっと楽しめること間違いない。
こういう、「ギリシャ神話」を教養として観劇するものに求める感じ、いかにも17世紀フランスの演劇らしい。原作はジャン・ラシーヌ。この脚本が書かれたのは、ルイ14世(ざっくりいうと、ヴェルサイユ宮殿の基礎を作って、パリからヴェルサイユに居城を移した人。「太陽王」の異名を持つ人)の治世でした。まだまだ芸術が庶民の手からは遠く、王侯貴族のものだったころの作品ですね。

あらすじはというと。
ギリシャ神話の怪物を次々に倒したことで名高い英雄・テゼの妻・フェードル(ミノス王の娘なので、血筋がいい。なにせミノス王の父親はギリシャ最高神のゼウスなのですから)は、夫・テゼの長期遠征中、深い心の病に悩み、今にもこと切れてしまいそうなくらい息も絶え絶えの状態で過ごしていました。
「心の病」の名はずばり、「恋」。
しかも相手は、夫・テゼの前妻の息子であるイッポリットでした。
血はつながらないけれど、関係からすれば「義母と息子」になるわけで、近親相姦に不貞、という二重の罪が初めから条件に入ってくる苦しい恋でした(ちなみに、フェードルはテゼとの間に子供もいます。でも、話の筋を聞いていると、フェードルは、テゼにイッポリットを紹介されたその時から恋に落ちた…一目ぼれだったようです)。
ところがこのイッポリットは、実の母が「アマゾンの女王」(異教徒の女王、くらいの意味みたいでした)だったこともあり、自分は長男でありながらテゼの正統な後継者とは思っていない、極めて真面目で女性に対しても潔癖な青年。そして、そんなイッポリットはひそかに、父王テゼが滅ぼした一族の生き残りの姫・アリシーに道ならぬ恋心を募らせていたのでした。

そんなところに、テゼ王が戦争で亡くなった、という知らせが入ります。
父を尊敬しながらも、アリシーを愛しているイッポリット。
夫を大切に思いながらも、義理の息子・イッポリットを愛しているフェードル。
二人にとってくびきであった「テゼ」という存在が、突然いなくなったもんだからさあ大変。

イッポリットはアリシーに恋心を打ち明け(アリシーもイッポリットのことを愛していました)逃亡しよう…なぁんてことを考えていたところへ! …突然イッポリットのもとに病み切ったフェードルが訪れ(ちなみにフェードルは、イッポリットへの恋心を隠すため、わざとイッポリットにつらく当たってきたので、イッポリットはフェードルのことを快く思っていなかったし、むしろ憎まれていると思っていた…なんて前提もあります)、
「私…実はあなたのことをずっと愛していたのおおおおお!」
と狂わんばかりの大告白され、イッポリットは茫然とします。
「何言ってんの、この女…」
みたいな感じです。でもフェードルはもう半狂乱なんで、イッポリットの茫然自失とした様子を見て、「受け入れられた」みたいな…なんか自分に都合のいい解釈をするんですよね。

ところが。
フェードルが一大決心をしてイッポリットに告白した直後に。
まさかのテゼ王生還!の知らせが届きます。

なんだって――――!?と慌てふためくフェードルとイッポリット。(余談ですが、この辺りがちょっと喜劇っぽくて面白かったです。「テゼ王」ってフェードルにとってもイッポリットにとっても大切で重い存在なんだけど、ちょっとうざい存在でもあるんですよね(笑))
とりあえず、イッポリットはフェードルの告白を「聞かなかったことにします」と返答。
だって、お父さんの奥さんが不貞を働こうとした挙句、その「不貞相手」が息子である自分だなんて醜聞、父王の不名誉、恥をかかせる以外の何物でもなく、これは父のために絶対に隠さなければならない、と…あくまでお父さんのことが大好きで、尊敬していて、そのために自分の中に秘密をため込むことにしたのですね。

ところがフェードルはもう精神がおかしくなっちゃってるわけで。
イッポリットは態度が冷たいし、自分に対しては不誠実だし、しかもイッポリットが自分の恋心を夫テゼに黙っているかどうかもいまひとつ信用していない。不信感の塊かつ恋心が抑えられない。
それを見かねたフェードルの乳母エノーヌは、一計を案じて、あくまでもフェードルのために、生きて戻ったテゼ王に、
「あなたの前妻の息子・イッポリットが、フェードル様に懸想していたのですよ!」
と告げ口してしまう。
フェードルを熱愛していたテゼ王は、怒り狂って息子・イッポリットを追放。イッポリットは、父王の名誉を守るため、「フェードルが自分のことを愛してると告白した」という「事実」も言わず、ただ、
「自分はアリシー姫を愛している。あの姫を、私がいなくなった後、囚われの身から解放し、手厚く保護してあげてほしい」
と言って旅立つんですね。アリシー姫にだけ、そっと「祖先の霊が祭られている神殿でこっそり落ち合い、二人で結婚式を挙げよう」と伝えて。
どこまでも生真面目な男です。

一方テゼはフェードルの乳母・エノーヌに、
「自分に嘘をつき、欺くイッポリットは追放した。でもイッポリットはアリシー姫を愛していると言っていたぞ」
と告げます。そのことをエノーヌから聞いたフェードルは正に狂乱の体に陥り、
「イッポリットはお前のせいで追放されたし、イッポリットは自分のことを好きだみたいに思わせたお前なんて、裏切り者だ!! もうお前の事なんて信じない!」
と激高し…大切に大切に育ててきたフェードルの怒りに触れたエノーヌは、絶望のあまり身投げして死んでしまいます。これで、フェードルがイッポリットに愛の告白をしたことを知っている人は、この世にいなくなってしまい…イッポリットは名誉回復の機会を永遠に失うことになります(ちなみに、エノーヌは結局、名誉回復されないまま舞台は終わってしまいます。そこだけはどうしても納得がいかなかったし…エノーヌだって一生懸命だったんだよ!とフェードルに訴えたい気持ちもふつふつとわいてきたのですが、そこがフェードルとその血統にかかった呪いの深さ、なのかもしれません…)

しかし、そのイッポリットも…
イッポリットを大切に大切に育ててきた侍従・テラメーヌが涙ながらに帰還し、テゼ王に報告します。
「津波に襲われ、四肢もバラバラになって死んでしまった」
それを聞いたフェードル、愛する人が死んでしまったことへの絶望と夫を裏切ってしまったことへの罪の意識に疲れ果て…毒をあおってふらふらとテゼの前に現れ、自分の罪を告白し(つまり、イッポリットは無実で、罪を着せたのはエノーヌだったこと)、そのまま死んでしまいます。ある意味、憤死・狂死だったのでしょうか。

一方、イッポリットの死の場面に遭遇したアリシー姫は、死んだ恋人の血濡れた着物の切れ端を握り、悲嘆にくれます。
その様子の哀れさと、イッポリットを息子として愛していた気持ちを取り戻したテゼは、同じくイッポリットを愛していたアリシー姫を自分の養女とし、イッポリットの遺言通り、手厚く保護することになったのでした…

という、激アツなお話でございました。
ふう、疲れた(笑)

ちなみに、私はこのお芝居について事前に勉強したり情報を入れたりすることなく見に行きました。
勉強しなくても、この内容は全て把握できました。まあ多少、「ギリシャ神話の世界だから、『怪物』が実在したってテイなんだろうな」と自分に言い聞かせてみていたところもありますが、そういうちょっとすんなり咀嚼しきれなかったところも含めて、舞台が理解できなかったということはありません。
それは、元々の戯曲が優れて人の心理を突いた言葉が豊富であったこと、そしてその「心理」は普遍性を持っていたこと、翻訳がとても親切で平易でありながら音律が美しくすんなり頭に入ってきたこと。
そして何より、俳優さんたち皆さんの圧倒的な演技力があったからでしょう。
これらすべてがそろっていなかったら、こんなにもすっと私の頭にも胸にも入ってこなかっただろうし…何より、感動もしなかったはず。

■フェードルを演じたのは大竹しのぶさんでした。第一場にフェードルは登場しません。登場するのは二場から。
登場した途端、大竹さんのフェードルは、つー…っと、涙が頬を伝っている状態でした。
しかしセリフはよどみなく。受けて立つ乳母・エノーヌを演じたキムラ緑子さんと、「これって詭弁なんじゃ?」と思うほど過剰にお互いの思いのたけを語り合います。
なんでしょうね、日本の文章は和歌の五七五七七みたいに、できるだけ文字数を減らすことでその中の音や奥行を味わう感じなんですけど、欧州文化は、自分の「情動」を理性的な言葉を尽くして微に入り細に入り説明せずにはいられない感じ…なのですね。説明しても説明しても、自分の心を語りつくせない。その語りつくせない心をできるだけ美しい言葉を選んで歌うように叫ぶ。
正直、「圧」を感じて…見ていて疲れました。
疲れて、「これ、幕間とかないのかな〜」とか思ったのですが(そういう情報すら入れていなかったということで(笑))、この舞台、途中で休憩入れちゃうと、緊張感がなくなって、見る方も集中できなくなっちゃう。
イッポリットとフェードルの間にできてしまった「秘密」がいつばれるかとハラハラするし、狂気と理性の間をふらふらとあるくフェードルに振り回されるし、でもこんなに緊迫感あるのに、エノーヌのセリフで笑っちゃうところもあるし。

約2時間、私自身の中にあるあらゆる感情…特に、私に著しくかけていて、非日常的ですらある「恋愛」の情を揺さぶられて、見終わった瞬間、全身の力が抜けるような、なにかぽかーんとしたような気持を味わいました。
あんまりいろんなことを言われて、セリフの速度で物事を考えていたから、頭が沸騰してその熱量で空でも飛んじゃいそうだったのに、舞台が終わると同時に一気に地上に引き戻された感じ。

これ、毎日やってるんだよね、演者さんたち。
毎日毎日、たった2時間の間に感情が上下したら、病気になっちゃうんじゃないの…?
俳優って…本当にすごい職業だな…

そんなつまんないことを考えたり、誰か一人の人にここまで熱狂する体力と情熱が自分にはあるか?とか、言葉って美しいな、語るだけで音楽になるんだなぁ…なんてことを次から次から自分の中で想いと考えが止まらなくなる、そんな経験をしました。

余談ですが、父を敬愛してやまない真面目で清廉な(その分小さくまとまっちゃって父のような英雄にはなれないと悟っちゃってる)イッポリットを演じたのは、平岳大さんでした。
平岳大さんといえば、昨年、父・平幹二朗さんが亡くなられたことが想い出され。
テゼ王とイッポリットの親子関係の向こうに平親子の関係性も見えるようでもあり、それはそれで切なく思いました。個人的に。

■舞台は黒と赤を基調に、そこが金がさし色として入るような、とてもモダンなつくりになっていました。
パンフレットを読むと、今、新国立美術館に来ている「スラブ叙事詩」を描いたミュシャが描き、それによってミュシャが大成功をおさめるきっかけになった女優サラ・ベルナールも、このフェードルを演じが事があったそうです。
フランスのミューズの一人であったサラ・ベルナールは、どんな風にフェードルを演じたのだろう。
彼女の「フェードル」にもまたきっと、私は心を激しく揺さぶられただろう。
そんなことを思いながら、劇場を後にしました。

とにかく激アツな舞台です。
そして「いいもの見た!」という爽快感に包まれること間違いなし、の濃密な舞台でした。
機会があればぜひどうぞ。

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posted by Lilalicht_8 at 21:52 | Comment(0) | 観劇録

2017年04月15日

自分のメモのための、取りこぼし一覧、の巻

■昨日来、突然花粉症の症状が劇症化しまして、本日考えるのがうっとうしい感じになっています…
なので、今日は自分のメモのための取りこぼし一覧を💧

これまで見てきて、感想を取りこぼしているもの…

映画「3月のライオン」前編
「これぞ暁斎!」展
地唄舞の公演
ティツィアーノとベネツィア派展
クラーナハ展
新感線「髑髏城の七人」
ミュシャ展
オルセーのナビ派展

今後ポチポチ感想を書いていきます。
宜しくお願いしまーす⤴

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posted by Lilalicht_8 at 18:17 | Comment(0) | 雑感

2017年04月10日

今月のネイル

大変ご無沙汰しました!
3月はほとんど体調不良で伏せっていて、4月はなんだかんだミッションがあり、こんなに更新できずにおりました…
前の更新が…え? 今月のネイル? てことはもう1ヶ月たった? 早すぎ!((((;゚Д゚)))))))
人はこうして…(以下略)

ということで、この間にも色々見てきて、たくさんのキラキラをもらってきたのですが、先に今月のネイルを!

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爽やかな5月の訪れを待つ、青いマーブルと、青いミラーネイルです。
青いマーブルは、ティツィアーノの描く青空をイメージしました。
明日からは通常運転に戻ります。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
posted by Lilalicht_8 at 18:07 | Comment(0) | 今月のネイル

2017年03月29日

映画「愚行録」を見てきました、の巻

■喘息がぶり返して、しばらくパソコンから遠ざかっておりました…
あまりに咳が止まらないので、かかりつけの病院に行ったところ、
「やあ、4年ぶりだね!」
と先生に言われまして。
え? 私、4年前も喘息だった?(笑) 
4年前といえば、今だから言えるのですが、心身ともにパニック状態で体調もすこぶる悪く、子供の時以来の喘息の発作を…そういえば起こしてたよ(笑)
今回も、ちょっとした山場を越えたところだったので、気が緩んで出てきたようです。きっかけは、3週間ほど前の高熱なのですが。
とりあえず、肺に異常はないと言われて安心しました。

気温も気圧も変わりやすいので、それぞれに体調を崩していらっしゃる方も多いかと思います。
皆様どうぞご自愛くださいませ。

■といったところで、ペンディングにしているものも色々あるのですが(もう一回見に行ってから感想を書きたい、というのが主な理由です)、映画「愚行録」を見たので、その感想など少し記録しておきたいと思います。

本当は昨日、今話題の「ミュシャ展」を見に行く予定だったのです。
ミュシャ展は企画展だし、期間中は休みはないだろう…なんて思っていたのですが、これが本当に勘違いの思い込みのすっとこどっこいでして💧
火曜日は休みだったのです。国立新美術館…
そのことに当日に気が付きまして、急遽映画を見に行くことにしました。
といっても、「3月のライオン」前編はもう見ちゃった。
「ラ・ラ・ランド」は自分の好みに合わない(ミュージカル映画は好きなのですが、なんというか…この映画からほのかに漂ってくる「雰囲気」が、私の本能を刺激するのです、「見に行くな」と(笑))。
んー、どうしようねぇ…というところで、突然思い出したのがこの「愚行録」でした。

「愚行録」、原作は読んでいます。
湊かなえさんの登場である意味確立されたといってもいい「嫌(イヤ)ミス」に、カテゴライズされる作品だと思います。
読後感が悪い。
と同時に…うーん、どうなんだろう…私は湊かなえさんの書く作品の作風や文章のリズムが肌に合わないので、積極的に読まないし他の人にお勧めもしないのですが、この「愚行録」を読み終わって、「湊さんはやっぱり、嫌ミスのジャンルでは抜きんでてるんだな」と思ってしまいました。
愚行録の作者・貫井徳郎さんは、デビュー作の「慟哭」が好きだったので(思えばあれも嫌ミスだったのですが)読むこと自体にためらいはなかったのですが、「愚行録」はそれほどでもなかったかなぁ、なんて。

原作に対してはそんな風に思っていたのですが、それでも映画を見に行こうと思ったのはなぜかといえば、ひとえに、主役が妻夫木聡さんと満島ひかりさんだったからです。

そしてその目論見は見事に当たりました!!!

いやあ、よかったですよ、映画「愚行録」。
話は確かにあまり気持ちのいいものではないのですが、映画としての出来がいい。
この作品、「オフィス北野」が制作に名を連ねていまして、そう、あの北野武監督の事務所ですね。
そのせいか、いわゆる「北野ブルー」へのオマージュなのでしょうか、常に画面が青いフィルターをかけたような青みがかった淡くて落ち着いた色を出していたんですね。
この青い画面の効果が、話の毒々しさをかなり軽減してくれていて、確かに後味の悪い話なんだけれど、かなりその後味の悪さを軽減してくれている。
また、この原作が「映像化不可能」と言われた理由である「複数の登場人物それぞれが『事件について証言する』一人称語り」をとてもうまくまとめていて、原作を読んでいない人にもきちんと話が伝わるように作られていたこともポイントが高いです。原作の「証言者」が何人か削られていたのと、原作にはいない登場人物が映画の中に作られたことなど、変更点もありましたが、不自然さを感じさせなかったのは素晴らしかったです。

何より、登場人物全員が素晴らしい!
キャスティングがいいんです。それぞれの人たちが適材適所で、それぞれの人物にピタッとはまっていて違和感がない。みんなさん演技が素晴らしく、それぞれの熱演に食い入るように見入ってしまいました。

妻夫木さん、満島さんがはまり役で想像以上に凄まじい演技を見せてくれたのももちろんよかったのですが、ここはあえて「証言者」の一人を演じた臼田あさ美さんについて。
物語は1年前に起こったとある一家の惨殺事件を週刊誌記者である田中(=妻夫木聡)が、一家の関係者一人一人に当たって証言を求める、という形で進んでいきます。
臼田さんはその「証言者」の一人なのですが、これがものっすごく嫌な女で…原作でも嫌な女なのですが、臼田さんが醸し出す空気とか、セリフとセリフの行間の溜息とか、煙草の煙すらもいや〜な感じ伝わってきて、迫力がありました。彼女の演技を見られたことも、この映画を見てよかった!といえる要因の一つに間違いありません。いい女優さんですねぇ。

ほとんど語らず、証言者たちの話を聞くだけの田中記者の「言葉にならない心の叫び」を、眉をしかめる、などの微小な表情の演技だけで伝えきった妻夫木さんの演技の凄味。
目の前にいる人すら見えてないような人形のような瞳で、人間の「魂の死」を伝えてくれた満島さんの切ない演技。
どれもこれも取り上げればきりがないのですが、本当に見ごたえのあるまさに「熱演」の応酬で、約2時間を堪能しました。

繰り返しになりますが、話はとても後味が悪いので(笑)気持ちが疲れているときにはお勧めできませんが、充実感のある映画を見たい時には、たまにはこんな映画もいいんじゃないかな、と思います。
そういう意味で、とても面白い映画でした。
元気な時に、ぜひどうぞ。

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posted by Lilalicht_8 at 22:35 | Comment(0) | 映画

2017年03月24日

大エルミタージュ展を見てきました、の巻

■見に行った順番はかなり違ってしまいますが、まずは大エルミタージュ展から。

「大エルミタージュ展」は六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されています。
現在同じ六本木地区にある国立新美術館で「ミュシャ展」と「草間彌生展」が行われていることもあり、若干地味な印象を受けます。
ちょっと話がずれますが、現在六本木地区には大きなところで、国立新美術館、サントリー美術館、そして森美術館と森アーツセンターギャラリーがあります。
六本木といえば一大歓楽街、遊興地区、といったイメージがあるかと思いますが、元々は大名屋敷が数多く占め、また戦前は陸軍、戦後は自衛隊の基地があった場所。それが一度「危ない風俗の街」になり、今また文化の街へと変わろうとしている…というとてもユニークな土地の歴史があります。

その「文化芸術の街」への大変革の第一歩が、この「森美術館」「森アーツセンターギャラリー」だったと思います。

実際、森美術館・森アーツセンターギャラリーの展覧会は非常に挑戦的かつ前衛的な企画が多く、学芸員の方たちの個性や努力がとても伝わってきて、いつもとても満足して美術館を後にしています。
今回のような大物の企画展はもちろんのこと、ちょっとした地味目の企画展であっても、時間の許す限り見に行こうと努めています。
もし東京に来て、時間が余るようなことがあれば、六本木地区の美術館の存在をちらっと頭の片隅に置いておくと、ちょっとお得かなと思います。お勧めです。

■さて、話を戻して「大エルミタージュ展」。
今回の目玉はクラーナハの「聖母子像」。うーん、今年は日本でクラーナハを大量に見てるな。いい時代になりました。
エルミタージュは、ご存知の通りロシア帝国ロマノフ王朝の冬の離宮でした。
そこにドイツ出身の女帝・エカテリーナ2世がドイツの美術品を収集し始めたのが、「エルミタージュ美術館」の元になったのだそう。
今回の展覧会の一番最初の絵画が、エカテリーナ2世の大きな肖像画だったのは、なかなかに心憎い演出。
エカテリーナ2世というと、旦那である皇帝に対してクーデターを起こした豪傑、というイメージがあったのですが、この肖像画のエカテリーナ2世は実に慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、優し気に描かれていました。
この方のバックグラウンドのあれやこれやを見ると、だいぶこの微笑みに対して「えええ…?」という疑念を抱いてしまうのですが、うん、まあ、人にはいろんな側面があるからね…きっとこういう優しそうな気質もあったんだろう…少なくとも、冷酷な人ではない、むしろ情に厚い人だったのかもしれませんね。

ロシアというと、未だ旅行するのにビザが必要で、あらかじめ旅程も提出しなければならない、など、あまり気軽に行ける国ではない、というイメージがあります。
最近、安倍首相とプーチン大統領が会談し、まずは経済協力から始めましょうか、なんて話になっているので、近いうちにビザなしで観光旅行ができるようになるといいなぁ、そうなったら行きたいなぁ、というくらいの気持ちの距離があります。
なので、しばらく旅行でロシアにはいく予定はない感じ。
だからこのように美術品・芸術品の方からこちらに来てくれるのは、またとないチャンスです。

特に今回は私が好きな時代…ルネサンスからロマン主義くらいの作品が多く展示されているとのことで、これは見に行かねば!と思っていた企画展でした(ちなみに今回の作品群は「オールドマスター」という年代的なくくりでまとめられていました。オールドマスターという言葉があるんですね。知らなかったです)。

その「オールドマスター」の得意分野といえばなんといっても宗教画。
今回もバトーニの美しい「聖家族」や、レンブラントの「運命を悟るハマン」(これは演劇を見るような絵画でした! 聖書の場面をこういう風に切り取るのか〜とかなり感動しました。ちょっと日本の漫画(劇画)っぽい感情表現がされています)など、「おお〜やっぱり宗教画面白いな〜」と見入る作品多数。
他にも、静物画や風景画のえりすぐりの作品が数多く来日していました。

さて、今回の目玉作品は、先に書いた通りクラーナハの「聖母子像」。クラーナハらしい、蠱惑的だけれどひんやりとした印象の、緻密な作品でなるほどこの完成度は目玉になるにふさわしい。
けれど私が一番心惹かれた作品は、スルバランの「聖母マリアの少女時代」という作品でした。

聖母マリアは修道院で少女時代を過ごし、その間裁縫をずっと学んでいた、という伝説があるそうで、この作品はその伝説を描き起こしたものでした。
赤いシンプルなワンピース(ほとんど貫頭衣といってもいいほどのシンプルな装いです)を着たおかっぱ頭のあどけない少女が椅子に座り、膝の上に作業途中の繕い物を置きながら、ふっと天井に目線を上げてひっそりと祈っている…そんな絵です。
今回の音声ガイドは今や作家としての知名度のほうが高いんじゃないかと思われる又吉直樹さんが担当していましたが、このガイドの中で又吉さんが語っていた通り、モデルの少女に対するしみじみとした愛情がにじみ出ている作品でした。
それもそのはずで、「聖母マリアの少女時代」のモデルはスルバランの娘だったのだとか。
愛しい娘の素朴さと清潔感、そしてそこから垣間見える日常の中にある高貴さを、深い愛情と洞察力を以て描いた、胸をぎゅっとつかまれるような作品でした。
もしかしたら、この作品を見られたことが、この企画展の最大の収穫だったかもしれません。
そのくらい美しく、でも決して「大作」とは呼ばれないだろう、「こっそりと胸の中に収めておきたい」密度の高い作品でした。絵画を見て、こんなにほのぼのと深い愛情に感動を覚えたのは、久々かもしれません。「久々」の前回がどのくらい前でどの作品だったかも思い出せないくらいに「久々」。
この「聖母マリアの少女時代」はできるだけ多くの方に見てほしいなぁ、と願ってやみません。

「大エルミタージュ展」というのは、ちょっと大仰に過ぎるかなぁ、と見終わってから思わないでもありません。
なぜなら、一つ一つの作品は「大作」というより「深みのある」作品だったから。
ただ、「深い」を表す的確な言葉が見つからないのであれば、「大エルミタージュ」と冠するのも仕方がないのかなぁ…なんてことを考えました。
「深エルミタージュ展」じゃ意味が通じないですものねぇ。
でも「大」というよりは「深」エルミタージュだと感じたのですよ。

その「深さ」は是非直接ご覧いただきたいと思います。
「大エルミタージュ展」には、滋味深い作品がたくさん集められた企画展でした。

☆東洋占星術のひとつである「算命学」について主に取り扱っているブログ「Wheel of Fortune」も再開しました。☆

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2017年03月23日

いろいろ見てます、の巻

■かーなーり、ご無沙汰しました!
高熱を発したのはもう2週間前になるのですが、まだ呼吸が苦しい瞬間がありまして💦
人と長く話しているときとか、一番ショックだったのはお風呂に長く入れなかったとき。
息が続かなくて咳き込んだりしています。
主治医の先生には、この症状があと一週間続いたら、肺のレントゲンを撮るように、と言われています。
まあ、多分何もないのでしょうが、「何もない」ことを証明するのも大切なことですし!
まずはレントゲンを撮らなくて済むように、早寝早起きののんびりした生活をしようと心がけています。

■さて、そんな状態ではあるのですが、あちこちに出歩いて色々見てますよ〜⤴
映画「3月のライオン」前編見てきました!
「これぞ暁斎!」展見てきました!
地唄舞の公演を見てきました!
「大エルミタージュ展」を見てきました!
それぞれに印象深く、また感慨深いので、自分の記録と記憶のためにも、順番に感想を書いていく予定でおります。どうぞしばらくお付き合いください。
…というか、どれもみんなもう一回見に行きたい(笑)

日々色々とものを考えて過ごしていますが、今猛烈に感じているのは、「勉強をしたい」という欲でした。
今の私には、インプットが足りていない。
社会人になるとアウトプットばかりで、どんどん自分の中身が空っぽになって、まるで出がらしのお茶のように味気ない人間になってしまう…そんな気持ちに今、とてもなっています。
仕事に直結しない、人からは「雑学」と笑われてしまうかもしれないけれど、そんな果てしない知識に対する貪欲さが、私の中にふつふつと湧き上がっています。
多分、そんな「欲」に突き動かされて、あれこれジャンル問わず、見物に行っているのでしょう。
知らないことを知る、というのは、人間だけに許された最高の快楽。
そんな言葉があったなぁ、としみじみと思い出している今日この頃です。

☆東洋占星術のひとつである「算命学」について主に取り扱っているブログ「Wheel of Fortune」も再開しました。☆

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2017年03月16日

今月のネイル

■「今月のネイル」という記事をUPしていると、「一カ月って早いなぁ」と感心してしまいます。
というわけで、今月のネイルです。

20170316今月のネイル.jpg

白から薄ピンク色へのグラデーション。
ポイントに銀のミラーネイルで波形を描いてもらいました。
ネイルの技術は本当に日進月歩で、たった1か月で想像もしなかったデザインや技術を見せてもらえます。
海外に行ったときも、このジェルネイルは案外好評で、「これどうやったの?」って聞かれることもあったりします。たいてい、うまく説明できないのですが(笑)

今月は、このデザインと一カ月過ごします。

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2017年03月13日

「彼らが本気で編むときは、」を見てきました、の巻

■東宝系の映画館で映画を見ていると、去年の秋口くらいから頻繁に予告が流れていて、印象に残ったのがこの「彼らが本気で編むときは、」でした。
何が印象的って、
「こんにちは、りんこです」
って出てくるのが…綺麗にナチュラルメイクして、花柄のお洋服を着た、生田斗真だったから。
いやあ、斗真ちゃん、本当に仕事選ばないなぁ…「土竜の唄」から振りきれ過ぎじゃないの?
予告を見るたびに、心の中でつぶやいていました。
「秘密」も結構最近だったよね。「土竜の唄・香港協奏曲」(だっけ?)は…たしか上映中だったか。
ついでに言うと、この映画を見に行った時にはもう、斗真ちゃんの次の映画の予告が流れていて、今度は高校の先生役。しかも純愛…っていう。
「生田斗真の使い出のよさ」
が昨今炸裂しているような気がするのですが、どうでしょう。
いっときの、「何を見ても、岡田准一が出てくる」みたいな感じです(否定的ニュアンスでとらないでいただきたいのですが、岡田君の演技、私は好きです。もっといえば、岡田君のアクションがすごく好きなので、また「SP」みたいなのをやってほしいんですよねぇ…)

で、岡田君を格闘技の師匠としている斗真君が、今度はLGBTについて真正面から取り組む映画に出るというのですから、これは見ないわけにはいかないではないですか。

■予告を見たときの「てざわり」をストレートにいえば、私は「マガジンハウス系の雑誌が一時期推していた、森少女的な、生成り・北欧・木製家具万歳!みたいな生々しさのかけたおとぎ話のよう」だと思いました。
監督が「かもめ食堂」の方だと聞いて、とても納得しました。
あれはいい映画だったけど、私のリズムには合わないなぁ…という印象がとても強かったのです。
その「最初のてざわり」は結局、映画を見終わるまで変わることがありませんでしたが、思ったよりも随分、「きなり」っぽさはなく幾分生々しさを感じるほどだったので、私の苦手感はだいぶ薄まりました。
とはいえ、その「おとぎ話のよう」な感じは、たとえばこの映画に出てくるのが「母子家庭」ばかりであることに象徴されるように、「男性不在」に由来するもので、薄まりはすれどもやっぱり通底する。
もちろん、りんこさんの彼氏のまきおくん(桐谷健太さん)とか、りんこさんのお母さんの彼氏とか、男性は登場するのですが、いずれも湯がいて油を落としたみたいにおとなしくて植物的な男性たちでした。

その「男性不在」を一番象徴していたのが、凛子さんに対して嫌悪感を抱く女性(小池栄子さん)とその息子の家庭です。

その息子さんは、主人公のともちゃんと幼馴染なのですが、母子家庭でしかもかなりネグレクトされているともちゃんのうちとはだいぶ違っていて、バイオリンの英才教育を受け、中学も音大付属に行く予定になっている、かなりお金持ちと想定されるおうちの子。
その子のお母さんも身なりがきれいで、おうちもいつもきれいに清潔に整えられている…なんてことから、彼女は専業主婦で、彼女の夫はかなりの高額所得者であることが予想されます。
でも、その「夫であり父」が一切映画の中に登場しないんですね。
後半、彼女はともちゃん、りんこさん、まきおくんに対して結構ひどいことをするので、「そういうことをする前に、夫はこの妻を止めなかったのか?」とかちらちら思ったりするのですが、本当に出てこない。

そういう、「男性不在」はこの映画から間違いなく「生々しさ」を取り除いているのですが、その半面、女性たちの「生々しさ」はかなり細かく書き込まれている。
その象徴が、この専業主婦の女性で、私は彼女を演じた小池栄子さんに、本当に助演女優賞を上げてもいいんじゃないかと思うくらい、心の中で喝采を送っていました。
男性も女性も「非現実的」なこの映画の中で、ほとんど唯一、血肉の通った女性だと思ったから。

そんな「ふわふわ」感に包まれた映画でしたが、随所に笑いがちりばめられていたり、何より伏線の回収がとても鮮やかで、終始一貫して品がよくて行儀のいい、とてもよくできた映画でした。
時折りんこさんが、花柄のワンピースの奥底に熾火のように残っている「男の荒々しさ」みたいなのを発現させて、それが面白かったり悲しかったり。生田斗真、うまいな。

こうやって感想を書いていくと、なんだか文句が先に立っているような気がしてちょっと心配になるのですが、私はこの映画、好きでした。
もう一回見てもいいくらいに好き。
そして、ちょっと頭が疲れたり、体が疲れたり、眠れなかったときに、子守歌のようにオンデマンドで流しっぱなしにしてそのまま眠ってしまいたいような…そんな映画でした。

何を書いてもネタバレになってしまうし、特に「彼らが本気で」何を編んでいたかは映画を見て確認してほしいので、ぜひ映画館にお運びください。

大いに笑えたし、じわっと涙が出るところもあるのですが、小さな事件がさざ波のように次々起こっても心がざわざわすることもなく落ち着いてみられるのは、この映画の長所だと思いました。
基本的に、情緒の安定した映画です。
過度に人の感情をあおり、情緒不安定に追い込む作品が多い昨今、この「安定感」は何物にも代えがたいです。
お勧めです。

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2017年03月11日

ようやく復活&咳と逆流性食道炎、の巻

■人間て熱があるときはもちろん、横になってものを考えてるとあんまり現実的な思考ができないんだな、と今こうして起き上って、パソコンの画面に対峙しながら改めて考えていたところです。
お騒がせしました、ようやく一日を通して平熱に戻りました♪

■自分の備忘として経緯を書いておくと、月曜日に咳が出始め、火曜日にも咳がやまず、水曜日の朝に微熱があるっぽいので病院に行って計ったら、39度あったっていう…
水曜日朝、自宅で熱を測った時には7度ちょっとあり、でも微熱の違和感とはちょっと違うのであらかじめ病院に電話してから行って、到着して問診票を書きながら再び熱を測ったら36度9分。
あ、こんな熱できてって嫌な顔されるかな〜でも咳が止まらなくて夜眠れないのは事実だから、咳止めだけはもらって帰ろう…
そう思って診察を待つこと約30分。
診察室に入り椅子に座ったとたん、先生が耳で計るタイプの体温計を「ピッ」と私の耳に当てたところ…

無言。
先生、計測結果を隣でPCカルテに記入している看護師さんに見せる。
先生と看護師さん、何かを無言で語り合う。
先生、もう一度私の耳に体温計を充てる。
数値目視。看護師さんとも確認。
おもむろに一言。

「…39度あるよ」
「は?」←素でこんな声が出ました(笑)

・・・人間、本当に間抜けというか、何度かこういう「いざ」というときに遭遇しても、学習することなく気の抜けた声が出るものなのですねぇ。
ついさっきまで待合室で「やべ、微熱だし仮病だと思われたらどうしよ」とか思ってたのに、本当に高熱があるときほど冷静なことを考える。
いや、もう冷静じゃないんですよね。自分の体調の本格的な悪化をあんまり認めないようにするために、「仮病だったらどうしよ」とか自分に嘘をつくようなことを考えちゃってるんだから。

すぐに鼻の粘液?をつかったインフルエンザの検査をしましたが、陰性。
続いて血液検査もしましたが、陰性。
結局きちんとした病名は聞かなかったけれど(多分「風邪」だろうけれども、風邪であることを証明するための検査をするのは面倒…と理解したし、そうなのだと思います)、薬飲んで寝てるしかないというのが結論だったらしく、その通りにしておりました。
水曜から木曜にかけての深夜半から朝にかけてはあんまり時間の感覚とかもわかんなくなっていて、でもその間にシーツとパジャマを2度変えるくらい、体中の水分を一晩で入れ替えたんじゃないかっていうくらい汗をかいたので、翌日にはだいぶ平熱に近いところまで、体温は下がったのでした。
そして金曜はまだなんとなく熱が下がりきらなかったのでぼんやりと寝て過ごし…そして本日土曜日、無事床上げとあいなりました。

この、水曜日から金曜日までの間にぼんやりと不安に思っていたのは、
「麻疹じゃないといいな」
ということでした。
あ、母にも確認しましたが、私は麻疹の予防接種は受けているのでかかる可能性は低いのですが、予防接種も万能ではないことは知っているし、頭の端っこに「東南アジア方面への旅行からの帰国者が、麻疹にかかったことに気が付かないまま人が多いところに出かけていた」というニュースがちらついていたので。
でも、台湾から帰ってきたのはもう3週間くらい前の話だし(つまりり患していたとしても潜伏期間は過ぎている)、血液検査までして特に指摘はなかったんだから大丈夫なんだろうなぁ…

本当に、人間横になっているときってあんまりろくなことを考えません。
体を縦にして物事考えなきゃね。
座禅は有効でも、寝っ転がってたって夢見るだけなんだわ。
なんてことを、今こうやってしみじみ考えているところです。

■ところで、今回処方された薬の中でひとつ、意外だったものがありました。
胃・十二指腸潰瘍の薬でした。
病院で説明されて、その時は「へぇ」と思ったのですが(熱があってうなずくしかできなかったんだと思います…)、
「咳が止まらないのは、逆流性食道炎の可能性があります」
といわれたのでした。
つまり、体を横にした状態だと胃液が逆流して、食道や気管を傷つけ、それで咳が止まらないのだろうと。
熱が出たのもこのせいではないかと思われているようでした。
なので、薬を処方されると同時に、
「暫くの間、寝るときには体を左に向けて寝てください」
と言われました。
胃酸が胃の中にとどまっているようにするためです。
咳止めを飲んでいたので実際にこの方法だけでどれほど咳が軽減されたのか、私にはわかりませんが、とりあえず今日まで3日間、意識があるときは体を左に向けて寝て過ごしたところ、確かに咳は出なくなりました。

なるほど、食べ物を溶かすほどの胃酸とは、これほどの威力があるものなのね。

体を縦にして(くどいようですが(笑))からネットで検索したところ、逆流性食道炎に由来する症状の一つとして確かに咳もあり、そして食道癌の可能性についても言及がありました(正確に書くと、咳と癌との因果関係ではなく、逆流性食道炎と食道癌の関係です)。

今回の一連の発熱から学んだのは、そんなことでした。

とはいえ、ちょっと一部にご迷惑をかけたので、治りましたというご報告方々、自分の体についての考察をご報告いたしました。
熱が下がってよかったです。

■というところで、次回の更新では映画「彼らが本気で編むときは、」の感想など書けたらいいなぁ、と思っています。

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posted by Lilalicht_8 at 19:10 | Comment(0) | 雑感

2017年03月04日

ザ・コンサルタントを見てきました(改めて)、の巻

■今年度のアカデミー賞作品賞の発表で手違いがあったことの責任を問われて、会計監査会社の「ビッグ4」のひとつ「プライスウォーターハウスクーパース」(以下PwC)の会計士2名に、今後二度とアカデミー賞に関わらさせない、という声明が出たのは、つい先日の事だったかと思います。
…っていうか、アカデミー賞にPwCがかかわってたの!? というのが私の第一の驚きで、集計は全てこの2人によって手作業で行われた、というのが私の第二の驚きでした。
なんでも、アカデミー賞に投票する権利がある「映画芸術科学アカデミー会員」(アメリカの映画業界における労働組合と、労働組合員みたいな関係だ、と聞いたことがあります)が約7000人いて、しかも24部門に投票しているそうです。
その7000人が真面目に24部門に投票したら、投票総数は16万8000票にも及ぶわけで、それをたった2人で手作業で行っていたとは! むしろ今までミスが起こらなかった方が不思議で、それを80年超管理し続けたPwCは、「やっぱりすごいなーさすがだなー」と感嘆するしかありませんでした。
英語で最初に「PwCの会計士がアカデミー賞の手違いで処分を受けた」という記事の見出しを読んで、「何のことやら?」と思ったのですが、なるほど「数字を扱うプロ」ということと「監査」の意味合いを考えるならば、確かに集計に会計監査会社を使うのは非常に合理的だなぁ、と納得してしまいました。

■さて、「数字を扱うプロ」であり「監査人」であるところの「会計士」…というわけで、以前ちょっとだけ感想を書いてペンディングにしておいた「ザ・コンサルタント」の感想を、改めて記録しておこうかと思います。
台北行きの飛行機の機内上映のプログラムのひとつとして吹替え版があり、期せずして2度目を見ることができ、色々と納得がいったからです。

■以前の記事でも書いたとおり、私はこの映画を見る前、
「昼は天才会計士、夜は凄腕スナイパー」
という惹句を目にし、「マーベル的なスカッとした大衆向けハリウッド映画なんだろう」と甘く見ていました。
見始めて割と最初の頃で、この見立てはあっさりと否定されます。
ネタバレになるのかならないのかをぎりぎりの線で探って、「うん、これはいいかな」と判断して思い切って書いてしまうと、主人公の会計士であり殺し屋であるクリスチャン・ウルフは、高機能自閉症(映画ではアスペルガー症候群と言っていました)を持っている発達障碍児でした。
「でした」というのは適当ではなく、アスペルガーなど発達障害は脳の機能の問題なので、現在進行形で「アスペルガー症候群」を有している人、ということになります。

私なんかは「高機能自閉症」というと、ともさかりえさんの熱演していたドラマ「君が教えてくれたこと」が非常に記憶に鮮明で、「人の表情を理解するための、人の表情を単純なマークにして、そのマークと感情を紐づけして覚える訓練」の様子などをすぐに思い出すのですが、まさにその「人の表情を単純化したマーク」(うれしい、悲しい、怒っている、驚いている…など)が出てきて、
「ああ、クリスは高機能自閉症なのか…」
と割合早いうちに理解することができました(この、「人の表情を単純化したマーク」は映画の随所に現れて、時には意外な使われ方をして、とてもいい小道具になっていました)。

その「人の感情への共感性や理解が非常に乏しい」はずのクリスが、会計士という仕事上は普通に他人に応対し、それなりの業績を得るに至るには、どのような過程を経ているのか。

じつはこの「過程」こそがこの映画の肝だったことに、映画を見ている途中から気が付かされます。
そう、「会計士」とか「スナイパー」というのは、話の筋立てとしては必要な要素だったのですが、実はそれが最終的な目的ではなく、この映画は一言で言えば、
「高機能自閉症をもつクリスチャン・ウルフ自身、そして彼の周囲の人々の『友愛』を描くこと」
がメインテーマになっている映画だったんですね。

びっくりしませんか? 能天気なスカッと系映画を見るつもりだったのに、実は「友愛」がテーマの映画だったなんて。
私は驚きましたよ。
それで、真剣に映画の画面と向き合いました。

勿論、天才会計士として面目躍如なシーンもあって、それはそれでスカッとします。
あと最後の銃撃戦なんて(ガンマニア垂涎のマニアックな銃が出ていたらしいですが、残念ながら私にはわからなかった…)、ものっすごい迫力でした。

でも、それらはあくまで、映画を彩るパーツのひとつだったんですね(もちろん、見ごたえがとてもあるので、「たかがパーツ」と切り捨てることはできません)。

クリスが今まで歩んできた道程には、母がいて…そして何より、父と弟がいた。
この「父」が情報戦専門の軍人だったもんだから、クリスはいわゆる「特別支援学校」に行くこともなく、徹底的に武力と知力を鍛え上げられ、そして「真に信頼できる相棒」と「絶対に裏切らない家族」を手に入れることができた。
クリスの父のやり方はかなり強引で、「こういうことは現実にはとてもできないだろうなぁ」と思うのですが、その一方で、クリスがカウンセリングを受けた精神科医の、
「彼らは異質なだけなんです」
という言葉にリアリティをもたらす。
この映画の感想をネット検索していたら、「発達障碍者の可能性を見せたということでも意味がある」という感想に当たりました。実際に映画製作側も、かなり綿密に専門家と相談し、その「可能性」を意識して作ったようでした。

そしてもう、オチがいいんですわ。
その「オチ」を見て、私はかなりスカッとしました。
その直前まで壮絶な銃撃戦があったのに、なんでこんなに爽やかなエンディングになってるんだ!(笑)

これは充分に2作目を期待できる映画だなぁ、続きを期待してもいいかな?と思っていたら、DCコミックスで漫画化されたそうで、なるほど〜わかるわかる!と思わず手を打ちました。

とにかく。
思いがけないテーマとオチが、結果とてもスカッとする映画にまとまっていたこと、そして希望が見える映画であったことに、私は大変驚き、そして感銘を受けました。
いい映画でした。
現在までにかなり上映館が減ってしまっているようなので、興味のある方はお早めにどうぞ♪

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2017年03月02日

台湾旅行から帰ってきました・その3〜故宮博物院に行く〜、の巻

■さて、今回の旅行のメインイベント「故宮博物院見学」です。
なにせ前回は白菜も角煮もありませんでしたから! 今回は白菜があります!

20170216故宮博物院1.JPG
故宮博物院は、フラッシュをたかなければ撮影はOKです。(もちろん、特別に撮影禁止になっている展示物もありますが)
白菜って、意外に小さいんですよね。
デンマークの人魚姫像とか、シンガポールのマーライオン像みたいに、「え。こんなに小さかったの?」と驚くレベル。

20170216故宮博物院2.JPG
施さんが「中国の人は本当に頭良かったですね」と言ったこの展示物。
何かというと…

20170216故宮博物院3.JPG
そう、液体の計量カップなのです!
カップ、という言葉からイメージするより相当大きいですが(笑)
両サイドの取っ手に見えるところも、上下ともに別の容量を計れるようになっているっていう優れもの。
この利便性を追求した発想そのものが素晴らしい。

で、この「利便性の追求」は文字にも表れています。
「ここ、見てください」と施さんが指したのはこちら。
20170216故宮博物院7.JPG
これは、青銅器の鍋の内側に掘られた金文を、拡大して解説展示していたボードの写真です。
上の文字の横に「二」みたいな横棒が書かれてますよね。
で、下の文字の横にも「二」みたいな横棒が書かれている。
上の字は「子」という字の原型。下の字は「子」の右手の下に糸紬のようなものが書かれていて、この糸紬部分も「子」を表すので、「子の育てている子」を表すことから「孫」を表しています。
つまり、この二つで「子孫」なのですが、これらの文字の下にある「二」の文字が「繰り返す」を意味しているそうで、結果この金文は、
「子々孫々」
という意味になるのだそうです。
たかが横棒二本をつけ加えることで、新しい機能と意味が発生する!
「昔の人も、面倒なことは面倒だったんですね〜同じ文字を何度も書きたくなかったんです」
と施さん。うーん、その解説って(笑)

20170216故宮博物院4.JPG
これは毎日の洗顔に使われた「洗盤」。
この内側に書かれているのが、
20170216故宮博物院5.JPG
こういう金文で、内容は、
20170216故宮博物院6.JPG
こんなことが書かれているそうです。
内容は、「自分たちの祖先がどれほどの勲功を上げ、どれほど偉大であったか。これを子々孫々まで伝えなさい」みたいなことだそうです。

「毎朝顔を洗うときに、この文章を子孫たちは見なくちゃいけないってことなんですよ」

とまたまた施さん。
つまり、毎朝毎朝顔を洗い祖先を思い、祈りを捧げることを強制している(っていうのは言い過ぎかしら)っていうある意味呪いの洗盤なのです。
はぁ、すごい。
でも確かに、自分たちの祖先に想いを馳せるという行為が失われがちな現在、こういう日々目にする道具に自分のオリジン(=源流)が刻まれているというのは、意味があるように思われます。
記憶や歴史の継承は、途切れてはいけないんじゃないか、と私は思っているので。

20170216故宮博物院8.JPG
さて、これは何かといえば「醸造酒」を作るための壺です。
では、昔はどういう風に「醸造」していたかといえば、

「ご飯を噛んでこの壺に戻したりしていたんですね〜」

おお! これが「君の名は。」でメジャー感を得た(言い過ぎかしら)「口噛み酒」製造器か!
施さんはさらっと当たり前のように説明していたのですが、あの映画のあのシーン(とその後の妹とのやり取り)で「うわぁ…」と若干引いてしまった私にとってはなかなかに衝撃的で、でも「まあ、菌の概念がなかった古代としてみれば、こういう手段が一番手っ取り早いよねぇ…などと納得もしてしまったのでした。

故宮博物院は見るたびに楽しく、また刺激的な場所です。
またぜひ見に来たいものです。

■ちょっとだけお返事集
>ゆばーばさん
白菜と角煮にはなかなか一緒に会えなくなっちゃいましたね〜
今度は角煮に会いたいなぁ、と思っています。

>みこさん
大阪にも「新農さん」がいらっしゃるんですね!
コメントいただいてから調べてみてびっくりしました。(しかも、ジャニ勉でも訪れていたし(笑))
しかも、元々は農業の神様だったのに、大阪だと薬や医学の神様になっている!
台北の保安宮だと、医薬は保全大帝、農業は神農大帝、と役割分担ができていたのですが、多分保全大帝と神農大帝は一緒にまつられるケースが多く、それで日本では混同されて(もしくはミックスしたうえで日本の神様とも混ぜた可能性も?)まつられたのかもなぁ…とちょっと民俗学的な考察まで想いを馳せてしまいました。
ありがとうございます。

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posted by Lilalicht_8 at 15:11 | Comment(0) | 旅行記

2017年02月27日

台湾旅行から帰ってきました・その2〜保安宮に行く〜、の巻

■個人であってもガイドをお願いすると、故宮博物院から「入館予約時間」を指定されるようです。
前回もそうでしたが、今回も、「この時間からこの時間の間に入館してね」という時間帯があったようです。

総統府に行って小籠包を食べて、それでも故宮博物院に入るまでに時間があったので、「ちょっとおまけで」とガイドの施さんが連れて行ってくれたのが、大龍峒保安宮でした。

20170216保安宮2.JPG
圧倒的な迫力!
細部に至るまできれいな細工が施され、堂々としたたたずまいです。

20170216保安宮1.JPG
柱と柱の間の梁の細工が見事で、思わず見とれてしまいます。

20170216保安宮3.JPG
保安宮の龍門です。
繁華街から少し離れているせいか終始落ち着いた雰囲気で、地元の方たちが「うちの氏神様」みたいな感じでお参りに来ているのが印象的です。

これだけの素晴らしい建築物であれば、ユネスコの世界遺産に登録されてもおかしくないのに…とおもったのですが、
「台湾は国連加盟国ではありませんから」
と施さん。
ああ、そうだった。台湾は国際連合に加盟できないでいたのですね…
それでもこのお寺の美しさや歴史的価値は、そんな政治的なあれこれで毀損されるはずもなく、世界遺産には登録されていませんが、2003年にアジア太平洋文化資産保存賞を受賞しているそうです。
台湾の人たちは、一応「世界遺産に準ずる」という理解をしているようでした。

20170216保安宮5.JPG
壁画も綺麗。
これは八仙大鬧東海の図。
道教の仙人たちと東海龍王の戦いの様を描いているそうです。

このお寺の主神は「保全大帝」といい、もとは呉さんというお医者様だったそうです。
一生を菜食で過ごし、色々な物を口にして毒や薬をよりわけ、様々な医術によって人々を救ったのだそう。
なのでこのお寺には、お参りする人が生肉などの供物と一緒に自分が身に着けていた洋服を身代わりにお供えして、体の悪いところを治してもらえるよう祈願するそう。
ちなみに生肉をささげるのは、門番をしている「五鬼」(青鬼・赤鬼・白鬼・黒鬼・黄鬼)の気を引いておくためなのだとか(笑)

20170216保安宮4.JPG
これも道教の物語の一節を表しているのでしょう。
道教の話も、もっとよく勉強しておけばよかった!

20170216保安宮6.JPG
やっぱりここにも媽祖様がいらっしゃいました。
海に面したアジアの都市では必ずお祭りされていますよね。
有名どころはマカオでしょうか。
日本でも、沖縄や長崎に媽祖信仰が伝わっています。

他にも、神農大帝などが祭られていて…ああ神農大帝って、読みかけの本の題材になってたっけ。まさかこんな風に邂逅するとは。ちゃんと本、読んでおけばよかったなぁ。

というところで。
この記事、まだ2日目の午後ちょっと回ったところなんです(笑)
今回も濃密な台北旅行となりました♪

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posted by Lilalicht_8 at 19:48 | Comment(0) | 旅行記

2017年02月24日

ちょっと遅くなりましたが、台湾旅行から帰ってきました・その1、の巻

■といいつつ、正確には「台湾」ではなく「台北」のみなのですが。
前回台北に行ったのは去年の8月の事でした。
それでまたこんな短いタームで台北に行くことになったかといえば、うーん、やっぱり台湾くらいだと国内旅行と同じくらいかもしくは安いくらいで行けちゃうから…でしょうか。

あと、前回は故宮博物院に翡翠の白菜も角煮もいなかったから!(笑)

聞くところによると、台南に新しく博物館(か美術館)のようなものができて、以来台北の故宮博物院と台南のそれぞれ一方ずつに白菜か角煮があるように巡回することになったのだとか。
そうか、白菜と角煮が台湾でそろうことはないのか。
海外の巡回企画展ならそろいそうだけど。

もしかしたらこれ、「リスクヘッジ」のひとつなのかなぁ…と思ったのは、帰国してからでした。

■さて、今回新しくいったところといえば、台湾総統府でした。
20170216台湾総統府.JPG
赤と白のレンガ造りは東京駅に似ていて、いかにも日本統治時代の建物、って感じですよね。
ジョサイア・コンドルの下で西洋建築を学んだ辰野金吾のお弟子さんたちが設計したので、「辰野式建築」と呼ばれているそうです。
この建物、前回台北に行った時から見たかったんですよねぇ。
平日の午前中だけ、公開されています。
総統府は(今のところ)実際に執務が行われているところなので(日本でいえば首相官邸みたいなものですよね)、入館するにはパスポートが必要です。あと、服装もあまりにカジュアルだと入れないこともあるようです(多分セキュリティの問題と、台湾政府への礼儀の問題なんだと思います)。
セキュリティチェックも結構厳しく、憲兵さんたちが機関銃もっているすぐそばで手荷物検査とX線検査があります。
総統府の周りには、制服を着た憲兵さん以外にも、ボランティアみたいに見える普段着姿で巡回している人たち(小型カメラを携帯している人もいるとか)もいて、かなりの人数が警備していることがわかります。

20170216台湾総統府2.JPG
館内は基本的に写真撮影禁止です。写真を撮っていいところは指定されています。
この写真は、中庭の北側部分からの写真。

中に入ると、北京語・日本語・英語でそれぞれ係りの方がいらっしゃって、丁寧に館内を案内してくれます。
私たちがたまたま当たったのは、かなりベテランの、非常に丁寧な日本語を話す男性でした。

20170216台湾総統府3.JPG
総統府の模型

20170216台湾総統府4.JPG
総統府の中は、現政権の人気を示したような写真や絵がたくさんありました。
蔡総統、愛されてますよね〜

20170216台湾総統府5.JPG
出口の木製の大きな扉。
楠の一枚板から作られているんだとか。

さて、先ほど「今のところ」総統府は執務をしているところ、と書きました。
というのは、今回のガイドさん曰く、新しい総統府を作る計画があるから、だそうです。
今の総統府はやはり古い。
特にIT周りのセキュリティに多大な問題を抱えている。
そういうセキュリティを考慮した新しい「総統府」を建設する予定があるのだとか。

「中国と戦争になるときのことを考えて」

ガイドさんはそう、いいました。
これが今回の旅のキィワードでした。
台湾の人たちは、当たり前のように、日常の中で「中国との戦争」を想定している。
それを、このガイドさんだけでなく、別の事からも知ったのでした。

話を戻すと、総統府見学は大変楽しかったです。
建物も綺麗だったし、中に展示されている台湾の少数民族の写真や、台湾の歴史、台湾の文化人の時系列パネル、台湾の軍服や、実際に使われていた大きな台湾総統の執務机など、興味が尽きませんでした。

でも、私たちはここでぐずぐずしていることはできません(ていうか、公開時間過ぎてたし!!!)
次は小籠包食べて、故宮博物院に行くのです!

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